みんなを幸せにする「公益資本主義」とは何か 株主重視経営では持続的に成長できない

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この連載でお話をうかがった3人の方からは、さまざまな学びを得ることができたと思います。

第1回の対談に出ていただいたデフタパートナーズ グループ会長の原丈人さんは、主に米国で活躍されているベンチャー・キャピタリストです。まさに欧米型資本主義の総本山的なところでビジネスを展開している原さんには、今の欧米型資本主義が持つさまざまな矛盾点を指摘していただきました。

第2回は、伊那食品工業代表取締役会長の塚越寛さんでした。長野県の伊那市にある本社までお邪魔して、社員の皆さんの働きぶりなども拝見しました。中学を卒業して働き始め、21歳の時に今の伊那食品工業の経営を任されて以来、69歳になるまで増収増益を続けてきた塚越会長の経営哲学には感動しました。

「今の経営者は株価と利益しか見ていない。一連の欧米型資本主義は資本主義の末期的現象としか思えない」

「経営者が何も言わずとも、社員が勝手にビジネスを動かしていくような会社にすることです。強引さ、知恵、戦略を駆使して、急激な成長を続けるような会社ではダメです」

企業経営に関わる人たちは、塚越会長のこうした言葉が持つ意味を、いま一度しっかり考えてみる必要があると思います。

そして第3回は、鎌倉投信代表取締役社長の鎌田恭幸さん。外資系投資会社で金融を学んだ後、社会に役立つ金融の形を求め同社を設立。その投資信託「結い2101」を通じて本当に価値のある企業にだけ投資するスタンスは、「みんなを幸せにする資本主義」を投資の側面から実現させていく大きなカギを握っています。

「公益資本主義」を世界に広めるべき

今、世界では人口増加による食糧問題や環境汚染問題、日本国内に目を向ければ人口減少、地方の疲弊、超高齢社会の到来といった問題を抱えています。それらの問題を改善していくためには、伊那食品工業や鎌倉投信のような「いい会社」がさらに増えていくことで、まず日本が変わる必要があります。そして、その日本的経営の本質を世界に広げていくことができれば、地球全体が必ずより良いものになっていきます。

その理論的な主柱として、株主だけでなくステークホルダーをはじめ、皆を幸せにする「公益資本主義」の考え方を今こそ世界に広めていく必要があると私は考えています。

大久保 秀夫 フォーバル会長

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おおくぼ ひでお / Hideo Okubo

フォーバル株式会社代表取締役会長。1954年東京都生まれ。国内、外資のふたつの会社を経て、25歳で新日本工販株式会社(現・株式会社フォーバル/東証一部上場)を設立。1988年、当時、日本最短記録で現・ジャスダックに株式を公開。同年、社団法人ニュービジネス協議会「第1回アントレプレナー大賞」を受賞。東京商工会議所特別顧問、公益財団法人CIESF(シーセフ)理事長、一般社団法人公益資本主義推進協議会(PICC)代表理事。「『社長力』を高める8つの法則」(実業之日本社)など著書多数。

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