ソフトバンクの焦り 巻き返しへ電撃買収
電波改善には時間要す
そこで、目を付けたのがイー・アクセスが使っている1・7ギガヘルツの電波だった。
ソフトバンクが主に使っている電波は2種類。2・1ギガヘルツと、つながりやすいことから「プラチナバンド」と呼ばれる900メガヘルツだ。900メガヘルツは今年7月から運用を始めたばかりでエリアが狭く、中心となっている回線は2・1ギガヘルツ。アイフォーン5でLTEに利用できる電波は、日本では2・1ギガヘルツと1・7ギガヘルツのみ(表)。つまり、ソフトバンクがアイフォーン5でLTEを使えるようにするためには、現状でさえ混雑している2・1ギガヘルツの中から、新たにLTE用の帯域を捻出しなければならない。今後、イー・アクセス買収によって1・7ギガヘルツの電波が使えるようになれば、回線の混雑を緩和できる。ソフトバンクは買収発表と同時に、テザリングの提供開始日を当初予定の来年1月中旬から12月15日に前倒しした。
ただし、「イー・アクセスを買収しても、電波状況はすぐには改善しない」という声が業界内には多い。そもそも、両社の通信網の調整やアップルとの手続きの関係で、1・7ギガヘルツの恩恵を受けられるのは「おそらく来春になる」(孫社長)。
加えて、両社とも大都市圏を中心に基地局を敷設しておりカバーエリアは重複が多い。ソフトバンクは電波の共用で自社の2万局にイー・モバイル1万局が加わるとするが、カバーエリアが1・5倍になるわけではない。「電波をすぐに改善したいなら、イー・アクセスを買うより電波がつながりやすい900メガヘルツの基地局を増やすほうが早い」(関係者)。