M&A、「相手選び」ですでに危うい典型パターン 結婚相手探し同様「高すぎる理想」は考えもの

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だからこそ、M&Aは自ら“仕掛ける”ことが重要だ。待っているだけでは魅力的な企業とは出会えない。出会えたとしても、コンペになってしまい、買えたとしても「高値買い」に陥る可能性だってある。意中の企業には積極的に声をかけ、コンペではなく「相対取引」に持っていくのが肝要だ。

3つ目は「相手に求める理想があまりに高過ぎると、相手は見つからない」という点だ。結婚相手に求める条件が多すぎたり、理想が高すぎたりすれば、相手が見つからないのは当然。メタボな中年オジサンが、20代で容姿端麗、気立てがよく育ちもいい女性を求めたとしても、本人にそれ相応の魅力がなければ、あまりにムリな話だ。

「M&Aありきの経営戦略」は、やはりろくでもない

それはM&Aでも同様である。対象企業に求める条件を増やそうと思えばいくらでも増やせる。ただ大事なのは、自分達で掲げたM&Aの目的を達成できるか否か。M&Aの目的を達成できる条件さえ揃っているならば、それ以外の多少の欠点は許容する度量がなければ上手くいくわけがない。やはり、「これだけは譲れない」という条件を決めておくのが重要だ。

ここまで、前回と今回でM&Aプロセスの1つ目である「M&A戦略」を、「結婚相手探し」になぞらえ解説してきた。私の持論として、「M&Aありきの経営戦略」はろくなものがない。これを言い換えれば、「結婚ありきの人生」はろくなことが無いということになる。

人生に求めるモノは人によってそれぞれで、結婚は義務ではないはずだ。自分が望む「生き方」があり、それを実現するための手段として「結婚」があるのだろう。「この人とこういう人生を歩みたい」、そのような想いがなければ、結婚生活が上手くいかないのは当然ではないか。結婚は目的ではなく、手段であることと同じように、M&Aも経営手法の1つに過ぎないのだ。

第一回:企業買収は「結婚までの道のり」そのものだ

田中 大貴 M&A戦略コンサルタント、MAVIS PARTNERS プリンシパル

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たなか だいき / Daiki Tanaka

早稲田大学商学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、その後、ジェネックスパートナーズ、マーバルパートナーズ(現PwCアドバイザリーのDeals Strategy部門)、ベイカレント・コンサルティングのM&A Strategy部門長を経て現職。一般社団法人ポストM&A研究会 代表理事、グロービス経営大学院にてファイナンス講師も務める。

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