4月に入り、多くの職場で新入社員を迎えた。定年退職による自然減のほか、転職で会社を去る人がいる一方、新卒・中途採用により正社員の総数が増えている企業は多いだろう。またM&Aにより企業を買収すれば従業員もついてくる。その過程で多少の人員整理はあるかもしれないが、一定数以上はグループ企業の正社員として受け入れることになる。
東洋経済オンラインは、過去5年で正社員を大きく増やした上場企業を独自に調査。トップ500社をランキングした。雇用期間の定めがなく解雇にも厳しい制限などがある「正社員」は、有価証券報告書で原則は従業員数として記載されている。直近本決算(2014年12月~2015年11月期)と5年前で比較して、その増加数を調べた。昨年も同種のランキングを掲載したが最新版となる。
2009年12月期~2010年11月期は、東日本大震災のちょうど直前の期になる。この時期の数字と比べることで震災前水準に比べ、どの程度の正社員数を増加させた確かめることができる。有価証券報告書に「臨時従業員」として規定されている非正社員数と、それらから割り出した非正社員比率なども併載した。有報の臨時従業員数は、その数が全従業員数の1割以上を占める場合、年間の平均人員を開示することが原則として義務付けられている。
正社員増は売上高の増加傾向とおおむね一致
正社員を増やした会社は、売上高も増加傾向にある成長企業とおおむね一致した。またM&Aを行えば連結対象が増えるので、売上高や従業員数も大きくなる。こうしたことから正社員を増やした会社には、M&Aを積極的に行っている会社が多い。ただしランキング上位の企業が、すべて国内の雇用を増やしているとは限らない。グローバルに事業を展開する製造業あれば、海外の正社員数も多くなる。
1位は電線首位の住友電気工業。大阪に本社を置く企業で、自動車の内部に使われている配線部品、ワイヤハーネスが主力商品だ。売上高でみると、2010年3月期の1兆8363億円から2015年3月期の2兆8228億円へ1兆円近く増加させている。売上拡大にともなう形で、この5年で8万人以上の正社員を増加させた。事業別にみると、自動車関連部門に従事する人数が多く、全体のうち18万0803人が働いている。
2位はイオン。スーパー大手のダイエーやマルエツの子会社化のほか、ドラッグストア大手のウエルシアホールディングスの子会社化など、相次いで行ったM&Aによるところも大きい。この5年での非正社員の増加数も日本で最も大きい。
3位の伊藤忠商事は、資源安で苦しい総合商社の中でも、比較的業績が堅調だとされる。従業員の増加として大きかったのは2013年4月に、バナナやパイナップルでおなじみのドールのアジア地域部門を事業取得したことが大きい。2014年3月期の有価証券報告書によれば、このドールの事業取得等で1万8000人以上の正社員増加となった。
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