やはり、おかしい新銀行東京 都民は徹底追及を

中小企業の資金繰り支援が必要ならば、公的セクターとしては保証制度を強化すればよい。保証制度は公的信用補完であり、それによって既存金融機関は融資を実行できる。東京都は保証枠を予算化するだけで済んだ。審査は既存金融機関が行うので、非合理な口利きや不透明な申請案件は、一定、排除できたはずだ。

ところが、銀行設立を選んだことによって、システム投資、人件費など巨額の費用がかさみ、ろくに審査もしないまま融資を続けた結果、不良債権を膨張させてしまった。見事なほどの失敗劇である。

たとえば、ある経営コンサルタントがこんな話を披露している。

「顧問先で税金を滞納している企業にも新銀行東京は融資している」。健全な中小零細企業にとって、資金繰り上の最後の砦といえる国民金融公庫ですら、税金滞納のケースでは融資は承諾しない。

そもそも、新銀行東京の設立をめぐって、本誌05年4月9日号で、東京都と銀行準備室が都議会に提出した事業計画書の内容と、出資協力依頼先の民間企業に説明した事業計画の内容が、大きく食い違っているという問題を提起した。資料は独自に入手したものだが、これに対して、新銀行東京は「そんな資料は知らない」とシラを切り、さらには「民間企業に説明したのは最悪の事業ケースであり、事業計画ではない」というあやふやな弁明をした。

しかし、出資先に異なる事業見通しを説明していたということ自体、資本市場の観点からはきわめて重大な問題をはらんでいる。それも最大出資者の東京都イコール東京都民に甘い事業計画を提出していたのだから、本来、言語道断だった。ところが、そのときも都議会は許した。

400億円の追加出資を認めるにあたって、都議会与党は石原都知事に対して「400億円を毀損しない」ことを条件に据えたという。これまた、不可思議な出来事である。毀損リスクのない資本などありえない。

毀損の危険性を感じるならば、出資などしてはいけない。あるいは、リスクはあっても、投資効果のほうが期待できるのであれば、その兼ね合いで配当水準など、発行する株式の条件設定を決定すべきだ。

「毀損させない」というのは、追加出資に手を挙げた議員諸氏の言い訳だけであって、資本の論理としては破綻している。

臭いものに蓋の可能性

東京都内では90年代の金融危機で東京協和・安全信用組合が経営破綻した。その際の監督官庁は東京都だったが、当時の青島幸男都知事は監督責任を棚上げし、破綻処理費用の一部負担を拒絶。結局、その部分は、国と信組業界が肩代わりした。

そして、新銀行東京問題である。終戦間もない時期までさかのぼって見ていくと、同じ金融機関問題でも、時間の経過とともに、東京都の振る舞いは無責任になっている。

このままでいけば、同銀行を新旧分離して、巨額の旧資産(不良資産)の処理に巨額資金を投じて、新資産(健全資産)は第三者に譲渡するのが関の山だろう。400億円の追加出資はそのための準備資金とも見えるが、そんな方法は問題に蓋をするだけだ。都議会はあらためて同銀行の資産内容を外部の第三者機関によるチェックに委ねるべきである。今、問われているのは、単に銀行経営のあり方だけではない。東京都が透明で民主的な自治体運営を貫徹できるかどうかも問われている。
(浪川 攻 =週刊東洋経済)

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