個人投資家にも、マイナス金利は不評だった 緊急アンケート調査で分かったこと

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一般家計だけでなく、市場にアクセスのある個人投資家に対しても「十分な理解が得られないまま、壮大な社会実験とも言える大規模な量的緩和政策や、マイナス金利政策を行うことでどれだけ効果があるのか?」という疑問を投げかけざるを得ない結果である。

マイナス金利政策はマインド改善につながらない

以上、マイナス金利政策のイメージを中心に、どのような層がマイナス金利を「望ましい」と考えているかを見てきた。

まず、一般の人々と比べて金融緩和のポジティブな影響を受けやすいとみられる株式の個人投資家でもマイナス金利を望ましいと考えるのは少数派であることが分かった。

株式の保有比率が高い「高齢層」や、「老後の生活資金のため」に資産運用を行っている人ほどマイナス金利が「望ましくない」と考えている。

マイナス金利を「望ましい」と考える傾向が見られたのは、「住宅(土地を含む)の取得の資金に充てるため」に資産運用をしている人や、政府・日銀が目指す「インフレ」が望ましいと考えている一部の人々に限られた。

これらを勘案すると、「マイナス金利は望ましい」という認識が広がって、それが個人のマインド改善につながるというシナリオは想定しがたい。一度導入してしまったマイナス金利政策だが、日銀は今後の運営に関しては難しい舵取りを迫られるだろう。

(注)今回のアンケート調査は、神津多可思氏(リコー経済社会研究所)、武田浩一氏(法政大学経済学部)、竹村敏彦氏(佐賀大学経済学部)が2011年より継続的に行ってきた調査の最新版である。筆者も法政大学大学院の博士後期課程の学生としてプロジェクトに参画している。本稿はこれらの共同研究者と行った分析を中心にまとめたものであり、多くの助言をもらったことについて、感謝の意を表したい。また、本稿はJSPS科研費26380412の助成を得て行った研究成果の一部である。

 

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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