世界一の大混雑!「新宿駅のバグ」を読み解く

「マツコ」でも話題の駅オタクが語る

渋谷駅の地下に2014年にできた「渋谷ちかみち」という地下通路がある。それは渋谷ヒカリエからSHIBUYA109までを渋谷駅の地下で結ぶ地下通路である。もともとあった地下通路に新たに都会的な内装やプログラムを施し、そこを「渋谷ちかみち」とネーミングをした。

ここではその試みよりもこのネーミングの「ちかみち」に注目したい。実のところ「ちかみち」は地下通路の本質を捉えていて言い得て妙だ。「ちかみち」とは地下道と近道を掛けている。「渋谷ちかみち」が独り占めしているのはもったいないぐらいだ。

地下道のナゾ

日本には地下通路は戦前からあったものの、戦後急増した。戦後、都市の人口が増える中、都市内の道路は増加する車の利用が進む。駅前の道路などは都市化し道路の拡張が難しい。地上の道路は車が幅を効かせれば当然歩道は狭くなる。狭い歩道では駅から溢れ出てくる人の量に対してキャパオーバーとなる。そこで、地下の歩道空間が考案された。

地下であれば、雨、雪、台風など天候に左右されず温度も保たれている。地上の道路を歩くと車に行く手をはばまれたり、信号で待たされたり、事故に合う可能性もある。2つの地点があるとき、地上と地下ではその間の距離は同じであっても、地下道は車に邪魔されることなく目的地に到着できる。いわばハイウェイ、つまり「近道」である。地下道とは「安全・安心・便利・快適」の原理がすべてそろった都市施設なのである。

ただし地下通路は蛍光灯が等間隔で並んだ無味乾燥とした地点Aと地点Bを結ぶためのドライな人工空間である(もちろん、地下には商店街が発達している場所も多いが)。それは地上を手紙的であるとたとえるならば、地下はメール的である。

手紙には、筆跡があり用紙があり、封筒があり、切手がある。これらすべてが、伝える内容に添えられている。そしてそれをポストに投函し、届くまでに時間が掛かる。そこには手のあとがある。対してメールは伝えることだけに特化されており、手紙がもつ手のあとはすべてない。メールで無理に手のあとらしきものを添えようとすれば、フォントを変え絵文字を付けるぐらいであろう。

地下通路はつなぐことだけを考え、多くのものが削ぎ落とされたメール的な空間である。それに対して地上の道路には手紙的でたくさんの色がある。道路には建物が面している。建物それぞれはみな異なる高さや形や色を持つ。そしてそこには空がある。明るい暗いだけでなく、天候という色も添え、空は道路を彩る。

むろん最近ではこの地下通路の寂しさは、地上に引けをとらないにぎやかな地下の商業空間のためにかき消されることもしばしばである。地下であることを忘れさせる勢いのある地下街も多い。

いずれにしろ、地下道には空がない。あどけない話である。

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