世界一の大混雑!「新宿駅のバグ」を読み解く 「マツコ」でも話題の駅オタクが語る

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4. ナスカの地上絵よろしく新宿の地下絵?

この本来「つなぐ機能」としての地下道がいくつも複合化し、新宿の地下で広がり地下ネットワークを築くようになったころ、どこからともなくこの新宿駅の地下通路網を「迷宮」「ダンジョン」と呼ぶ声が聞こえてきた。新宿駅で迷うことが決して個人的なものでなく、他にも迷っている人がいることが自覚され、その経験を共有できるようになったからであろう。

「新宿ダンジョン」と呼ばれて

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新宿駅はいつしか巨大な地下迷路と化していた。通路という機能を追求したその副作用として生まれた迷路的な空間の一面はゲームにまでなってしまった。ゲームクリエイター上原大介による『新宿ダンジョン』である。

自分は新宿駅より先に渋谷駅の巨大な迷路に興味を持った(そのことは「マツコの知らない世界」という番組にも呼んでいただいて語っている)。渋谷駅の複雑な空間に、隠れた秩序があるのではないかとその形を調べた。そして、渋谷駅の中に「たてのリング」と「よこのリング」という2つの環状の形が渋谷駅を形作っていることを見いだした。

そして今回、新宿駅でも同様に形探しを試みた。ところが、新宿駅では環状のようなシンプルな形が出てくる代わりに、現れたのは3つの文字であった。それらは漢字の「田」、カタカナの「ラ」、ひらがなの「み」であった。これらをまとめて新宿「田ラみ」と呼んでいる。

これらは地下連絡通路網の形をただ文字として見立てたものであるので、地下通路網を示した地図があればだれでも見ることができる。それは新宿の大地いっぱいに文字が広がっている状態なので、まるでナスカの地上絵のようであるが、地下であるのでナスカの地上絵のように上空からは実際に見ることができない。

渋谷駅の「2つのリング」は、周りからは独立した渋谷の谷底にできた立体的な空間構造を持つがゆえに生まれた形である。似たように新宿のそれは環境と密接に関係している。新宿「田ラみ」はその周辺と絡み合いながら、新宿駅が周りと伸びやかに連結するアメーバのように広がっていることを表している。それは地理、地形、歴史、文化を見事その形に集約させている。「田ラみ」に新宿駅、新宿の秘密が埋め込まれているのだ。そして、この3文字はだれが仕組んだものでもない、自然発生的にできたものだ。

普段、歩いている地下通路網を俯瞰し全体を見ると、実は大きな文字となっていて、その文字のなかを人々がさ迷っていることを想像するとおもしろい。

この「田ラみ」については、詳しくは拙著『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』(SB新書)でも書いている。紙面の都合で本書のあとがきが割愛されてしまったので、この記事はあとがきみたいなものだ。

田村 圭介 一級建築士・昭和女子大学環境デザイン学科准教授

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たむら けいすけ / Keisuke Tamura

1970年東京生まれ。95年早稲田大学大学院理工学研究科建設工学(建築)修了。98年ベルラーヘ・インスティチュート・アムステルダム修了。
98~99年UN Studio勤務。99~2002年FOAジャパン勤務時に横浜港大さん橋国際客船ターミナル(02年)の設計・監理を担当した。著書に『迷い迷って渋谷駅』(光文社)、『東京駅「100年のナゾ」を歩く』(中公新書ラクレ)。
 

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