通常国会が閉幕し、政治の焦点は21日の民主党代表選、26日の自民党総裁選に移った。
与党の党首選は、現職首相が支持率低迷で政権運営でも党内に強い批判がある場合、反対勢力との対決型か、候補乱立の乱戦型となる傾向がある。一方、政権奪取目前の野党第一党は通常、追い上げを主導してきた現職党首を全党で支えようという空気が支配し、無風選挙となる。遠心力が働く与党、求心力の野党第一党という図式だ。
ところが、今回は党内に不満鬱積の不人気首相にもかかわらず、民主党代表選は「1強3弱」で首相優勢、反対に自民党総裁選は、谷垣総裁の不出馬表明で、本命不在の「0強4弱」となっている。落ち目の野田民主党が求心力の党、追撃する自民党が遠心力の党という珍妙な展開である。
だが、一皮めくると、民主党の場合、野田首相の求心力ではなく、1年ごとの首相交代は不可という空気、小沢離党騒動後の厭戦気分、内紛再燃による党解体への恐怖、次期総選挙での敗北責任の野田首相への押しつけなど、リーダーも一般の議員も生き残りの思惑から後ろ向きの選択に走った結果の「1強3弱」という姿が見えてくる。
政権復帰を視野に入れる自民党は実にわかりやすい構図で、「首相の座」に血眼の「4弱」候補による政権欲むき出しの権力争奪劇だ。両党とも、リーダーたちが国利国益どころか党利党益も忘れ、民主党の場合はそれぞれの生き残り、自民党の場合は首相の椅子という私利私益による計算が先に立っている感があり、ともに国民の意識や危機感から大きくずれている。
乱立乱戦が問題ではない。われこそはと思うリーダーが名乗りを上げ、姿勢と路線とビジョンと政策を競う党首選なら、国民は大歓迎だろう。どんな日本にするのか、世界とどう向き合うか、それを訴え、実行する「無私の指導者」を、国民は待望している。
だが、現状は両党とも、損得勘定とパワーゲーム優先、論戦不在だ。残念ながら、野田首相も含め、激動の世界政治の中で国民生活や国益を維持・強化し、国際社会もリードする指導者という条件を具備した党首候補者は見当たらない。
民自両党の低迷の原因はそこにある。
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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