「30代シングルマザー」の華麗すぎる恋愛事情 バツイチ子持ちは、ピンヒールを履き続ける

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「エリコさんのところなんてもう小3とかでしょ? ユウミちゃんのところももう小学校あがったっけ? うちはまだ小さいからお留守番はないし、そもそもお母さんは、遠くはないけど一緒に住んでないし、オジサンをうちに呼んでるよ。子供はあの、廊下入ってすぐ右のベッドルームで寝かせて、私たちはリビングにいる」

化粧っ気があまりないナオミは、私の高校時代の同級生で、進んだ大学も同じだったので、彼女の学生時代の恋愛遍歴もよく知っている。積極性はあまりなく、1人の人とじっくり付き合うタイプで、性には閉鎖的だった。

ナオミのお相手は、40歳の「オジサン」

結婚に向いている気がしたが、旦那とは昨年から別居、先日、離婚が成立した。今のお相手は、オジサンと呼ぶには若い40歳そこそこの既婚者である。あまり詳しく教えてくれないが、どうやら元々彼女の勤める病院の入院患者であった。

「オジサン、最初はそんなにガツガツしてないから好きだったけど、会う度にしてる。初めてイッたのも、旦那じゃなくてオジサンなの。とりあえず前戯が長くて、あと、終わった後も舐めてくれたり」

彼女の話を聞きながら、私は1人の女性を思い浮かべた。私の母の親友で、30代で旦那と死別、2人の子供を女手ひとつで育て上げたサエコさん。彼女は子供が大学生と高校生になった50代にして、生まれて初めて「性に目覚めた」。都内の大学で教職につき、講演やテレビ出演までこなしていた彼女は、仕事量を半分に減らして、長野県にある彼の職場の近くに2人のマンションを借りて、週の半分近くはそこで過ごすようになった。母曰く、学生時代のサエコさんは優秀で美人であったが、「セックスに興味がないせいか、色気ゼロで、そんなにはモテてなかった」。

私はユウミたちの話を聞いて、それぞれ華やかだなぁと思った。そして、別に子供がいることと、男性と性的関係にあることを矛盾しているとも思っていないし、背徳感もないのかもしれない、と。ただし、サエコさんの性的解放についてなんとなく思い出している時に、ユウミが言った言葉で、そんなに軽やかでもない彼女たちの性と恋も浮かび上がってきた。もしかしたら、子供がいることをあえて気にせず女でいること、背徳感を感じないことも、彼女たち自身が作り上げている「状態」なのかもしれない。

「旦那がいるならしょうがないけど、シングルなのに子育てに明け暮れてたら、なんか普通の女としては上がった感が出るし、でも男遊びにばっかり明け暮れてたら、母親としてヤバいみたいになるじゃん。さすがにそれ、どっちもイヤ。ピンヒールでセックス帰りでも、死ぬ気で味噌汁は出汁からとるよ」

鈴木涼美(すずき すずみ)/作家。2009年に東京大学大学院学際情報学府修士課程を修了。2014年に5年間勤めた新聞社を退社。同年、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)を刊行した

 

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