夜の多摩地区で働く「熟女キャバ嬢」の心理

見え隠れするのは「若さ」に対する恨めしさ

熟女キャバ嬢の実態とは?(写真 :KAORU / PIXTA)
東京郊外の多摩地区のキャバクラで働く平均年齢40歳の熟女たち。『「AV女優」の社会学』(青土社)の著者である鈴木涼美氏が、熟女キャバ嬢の実態に想う。

 

当記事は「GQ JAPAN」(コンデナスト・ジャパン)の提供記事です

そこにいる多くの女が、「老後のため」なんてやや自虐混じりの軽口を叩き、大したヘアセットもせずに座っている。通勤時の装いは極めて地味で、グレーのロングスカートやボーダーの上着は「蝶」のその字にあまりにそぐわない。

安っぽい化繊のドレスを着て店に出ても、彼女たちの話し方や立ち居振る舞いが劇的に変わるわけでもない。それでも、彼女たちがグラスを拭くとか、おしぼりを折るとかいう労働以外の何かを提供してそれなりの対価を得ていることは明らかで、その何かを「女」と呼ぶのならばその通りであるのだろう。

熟女キャバクラ「M」の平均年齢は40歳

多摩地区のとあるJR線の駅の近くにある熟女キャバクラ「M」の女たちの平均年齢は40歳。下は32歳から上の50歳まで幅広く、半分以上が子持ち、そのうち約半分がシングルマザーである。1人は、19歳で産んだ娘が一昨年出産し、孫と3人で同居する。会社員やパートとの兼業者もいるが、在籍嬢の定着率の良さは店の売りでもある。

それなりの対価とは言え、平均時給は1500円前後。売り上げや出勤頻度などで変動するが、歌舞伎町や六本木のような高額を稼ぐ嬢は皆無だ。営業時間は夜8時から翌1~3時まで、ドレス代やヘアメイクなど出費を考えれば心惹かれる金額ではない。その地区のファミレスの時給は930円~とあった。それでも、彼女たちの口から一義的に出てくる店で働く動機は、生活費が必要、貯金をしたい、など経済的なものである。にも関わらず仕事場を見れば、「生活のための仕事」以上の意味があるように見えるし、むしろその動機を隠すために、大した額でもない収入を「必要なもの」であるふりをして、店にしがみついているようにすら感じられるのだ。

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