スタインウェイピアノの価格は年々上昇している。その理由として、原材料の調達コストが上がってきていることが挙げられる。高品質のピアノを作るためには、寒い地域で育つ木目の詰まった木材が最適とされているが、温暖化の影響で原材料の価格がじりじりと上がってきている。必然的にピアノの販売価格も上昇する。
興味深いのは、販売価格の上昇に伴って中古価格も上昇し、その結果として有益な投資効果につながる点だ。ちなみに米国市場の数字では、50年前に作られたスタインウェイピアノの現在の価格は当時の販売価格の9倍以上だというのだから恐れ入る。最近ヴィンテージ・ポルシェの価格が高騰しているという話と重ね合わせて考えると、ここにもまたピアノと車の類似性が垣間見える。
日本法人"ジャパン"の果たした役割
スタインウェイ・ジャパンの創設は1997年。それまで長く輸入代理店を務めてきた松尾楽器商会は、スタインウェイ・ジャパンの設立に伴い、首都圏を掌握する最大手のスタインウェイ・ディーラーへと転身して現在に至る。そのあたりの構造も車業界におけるポルシェ・ジャパンとミツワ自動車の関係によく似ている。
奇しくもスタインウェイ・ジャパンの創設と同じ1997年、ポルシェ・ジャパンの設立によって、それまで輸入権を持っていたミツワ自動車は、ポルシェ・ジャパン傘下の正規ディーラーとなった。この両ブランドに限らず、本国直轄の日本法人である"ジャパン"の存在は、ブランドの浸透力を考える上でとても大きな効果を発揮しているように見受けられる。
車の世界では、「ポルシェ・ジャパン」のほかに、「メルセデス・ベンツ日本」、「アウディ・ジャパン」、「ジャガー・ジャパン」、「プジョー・シトロエン・ジャポン」、「ルノー・ジャポン」などなど、まさに"ジャパン"の花盛り。この存在が市場にどのような影響を及ぼしているのかといえば、商品情報が入手しやすく、安心して車を購入できるようになったうえに、アフターサービスの面でも信頼できる状況が作られたこと。
さらに"ジャパン"を頂点とした販売網の構築は、メーカーにとって宣伝やキャンペーンの統一を図れることとなり、極めて効率のよいセールスにつながっていることは間違いない。それが最も顕著に表れているのが、イタリア車やフランス車ではないだろうか。
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