国内不振と反日運動響き停滞、資生堂の誤算 12年度見通しを下方修正

拡大
縮小

売り上げが伸び悩む中、費用削減が待ったなしの状況だ。同社は事業領域別に7つのタスクチームを組織し、広告宣伝、販売促進費を中心に今期70億円、14年3月期(来期)には200億円の削減を模索。さらにこれらの削減額とは別枠で、構成比が右肩上がりとなっている人件費をはじめとする固定費部分の圧縮にも、来期以降に本格的に着手。来年1月をメドに“第2弾”の具体的なコスト削減プランを出すという。

上記のようなコスト削減策が功を奏しても、上期の4倍近い営業利益を出すのは簡単ではない。

ネット販売はまだ未知数

国内売り上げの縮小を食い止めるため、資生堂は今年4月に「Beauty&Co.」「ワタシプラス」の2ウェブサイトをオープン。これまで避けてきたネット通販に参入するとともに、ネットから百貨店、化粧品専門店などへと顧客を誘導するための新たなビジネスモデルづくりに励んできた。両サイトとも登録会員数は60万人に達し、「順調に来ている」(末川社長)とするが、いまのところ店頭売り上げの劇的な回復にはつながっていないようだ。

海外事業にも誤算が生じている。資生堂は今回、海外事業の通期売上高見通しを60億円引き下げた。影響が大きいのは中国。尖閣問題に端を発した反日運動が響き、下方修正分の約50億円を占めた。

資生堂は、尖閣問題に伴う反日デモの発生当初、100店以上の百貨店売り場を数日間休業したほか、1000店を超える現地化粧品専門店の売り上げも大きく落ち込んだ。現在、百貨店はほぼ全店が復旧しているものの、専門店の売り上げの回復は鈍い様子。中国の今期売上高は1ケタ台の成長にとどまりそうだ。

 

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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