中途採用の面接をするつもりで、こういう人が欲しい、ついてはそれができますか?と一切の先入観を排除して問いかける。その先輩部下が今持ってる知識・スキルと、チームが必要とするものとのマッチングです。これならいけそう、これはちょっとしんどいかな、と整理する。
──いったん年功メッキを剥がして時価評価する……。
そのうえで、どんなチームにしたいか、自分の言葉で相手に伝わるように話す。先輩部下に若手の教育・指導役をお願いするなら、あなたのこの知識・スキルを伝授してほしいと明確に指示します。「ひとつよろしく頼みます」「面倒見てやってください」など漠然とした頼み方はダメ。何を伝授するのかすり合わせができてないと自分の解釈で動かれてしまい、取り返しがつかないことになりかねない。後になって注意しようもんなら、雰囲気は完全に壊れます。組織が機能不全に陥れば、上役からは管理能力なしの判を押されてしまう。
──うまく意識を切り替える方法はありませんか?
ホンダの創業者・本田宗一郎さんはかつて「社長なんて、課長、部長、包丁、盲腸と同じ。要は命令系統をハッキリさせる記号にすぎない」と仰った。役職を純粋な役割意識でとらえ直すのです。舞台に例えると、チームリーダーは舞台監督で、まず構想を練り、最適な配役をし振り付け・演出をする。60歳の部下にAの役を演じてもらうなら、演出家として遠慮なく、躊躇なく、気遣いなく、明確にその役に対するリクエストを伝える。もちろんその過程で役者の意見を聞くのはいいけど、指示する人と従う人の役割分担はハッキリしておかないと。役者がそれぞれ勝手に演じたら舞台はめちゃくちゃになる。
要は役割論です。どう新しい役を演じればいい舞台ができるか、そう気持ちを切り替えればいい話です。
役割循環時代の勝者は主役も脇役もこなす人
──理で割り切るにしても、やはり情の部分もきちんとケアしたほうが、円滑に進みそうですね。
「~してください」というような乾いた命令よりは、「~していただけるとありがたいです」というような心の通った言い方がいい。厳しいことを言う場面であっても、役割で言ってるんだなと感じてもらえるように。感謝が伝われば悪い気はしない。自分が関わった若手が育ってるとか、昔取った杵柄でもめ事を収めたとか、主役は降りたけど、いぶし銀の輝きを発してる俺もまんざらじゃないな、とかね(笑)。
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