鳩山新政権、政策裏付ける財源提示がカギ--日本の財政赤字拡大の可能性も《スタンダード&プアーズの業界展望》



 鳩山内閣は、小泉純一郎元首相が2005年に再選された時と同様に、向こう4年間は消費税増税を行わない方針を明らかにしている。来年夏に参議院選挙を控えていることもあり、財政政策では即効性のある政策に重点を置き、参院選後に構造改革のような時間を要する政策の実施を本格化するものと思われる。したがって、政権交代による直接的な影響はなさそうであるものの、中期的には、新政権が打ち出す政策やマクロ経済環境次第で、日本のソブリン格付けにマイナス影響が及ぶ可能性もある。

地方自治体については、民主党は「ひも付き補助金」を廃止し、地方が自由に使える「一括交付金」として交付する方針を示している。これが実現すれば、自治体は国から、より独立した財政運営が可能となるうえ、交付金をより効率的に利用できる余地も広がる。この点は、取り組み姿勢の程度と、さらなる財政再建の実現可能性にもよるが、一部の地方自治体にとっては格付けのプラス要因となりうる。これが実施されれば、地方自治体の財政運営の自主性、ひいては財政面での独立性が高まる可能性がある。

そのほか、国が地方財政を調整・支援するための制度を創設する方針だが、格付けに対する影響についてはなお不透明である。一方、新政権には公約した政策を実施すべく、各省庁への予算配分を大幅に見直す、という難しい課題が待ち受けており、新政権がどの程度、この問題に切り込むことができるか注目される。

新政権は政府系機関の民営化計画等の見直しや、再編も実施するものとみられる。たとえば、すでに、亀井静香金融・郵政改革担当相は、日本郵政グループ3社の株式売却凍結法案と、郵政民営化見直し基本法案を、10月に始まる臨時国会に提出する意向を示している。また、日本政策投資銀行(AA-/安定的/A-1+)も民営化に向けたプロセス等の変更が行われる可能性がある。

他方、仮に高速料金の段階的無料化の一環として、日本高速道路保有・債務返済機構(AA/安定的/--)が将来的に廃止されれば、民主党の公約ベースで約35兆円(実際には今年3月末現在で、高速道路運営会社の債務等も含めて約41兆円程度の債務がある)の債務が国の借金となる可能性がある。しかし、仮にそうなった場合でも、同機構の現在の格付けはソブリン格付けと同等であるため、当該債務の返済リスクに及ぶ影響はない、とみられる。他方、国の債務が日本高速道路保有・債務返済機構などから受け取る債務残高だけ増加する一方、同額の偶発債務が減少することとなるため、国の信用力に対する影響は、それ程大きなものにはならないであろう。

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