ファンドがオプトの監査等委員会移行に反発 監査等委員会は新たな"ガラパゴス制度"だ

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ーー新株の発行はそれなりに手間暇がかかりますので、自己株式の形で持って入れば機動的な資本提携が可能になる、ということでしょう。

細水 そうですが、いつ市場に大量の株が放出され、保有株の希薄化が進むかわからない状態に置かれるのは株主として不本意です。現在の株価はPBR(株価純資産倍率)が1倍を割る水準です。

株価が安いときは潤沢な資金があるのですから自己株式の取得を実施して、少しでも株価を上げる努力をすべきです。ROE(自己資本利益率)が低水準なのも、資本が厚いことが一因ですし、その意味でも、自己株式取得を実施して、厚すぎる資本の是正を図るべきです。

ーーオプト経営陣と対話をするようになって4年とのことですが、明確に会社の方針に反対する意思表示をするのは今回が始めてですか?

細水 対外的に表明するのは始めてです。昨年の総会ではポイズンピル(買収防衛策)の継続について、経営陣に廃止を求めるとともに、株主総会でも反対票を投じましたが、公に意見表明を行うということはしていません。

ーー会社側はスタンスの急変と受け止めているのではありませんか。

細水 残念ながらそれはそうかもしれません。そんなつもりは全くないのですが。当たり前のことを当たり前に主張しただけなんですけれどね。日本の経営者は当たり前のことですら言われ慣れていない、逆に言えば機関投資家が遠慮をしすぎている。

少しでも何か正論を言えば、過激なアクティビスト呼ばわりされるから何も言わない、というスタンスです。せっかくスチュワードシップコードとコーポレートガバナンスコードが導入され、株主との対話が期待されているというのに。正論で議論できなくて対話も何もないでしょう。

ーーガバナンスコードの導入後、日本企業の意識は多少なりとも変化し、漸く一歩を踏み出したとは言えませんか。

細水 この歩幅が一歩だとすると、二歩目は一体いつ、どのくらいの歩幅で踏み出すつもりなのかと言いたい。そもそも、アベノミクス政策のもと、大胆な変革を一気に押し進めて企業の競争力を強化し、海外からの投資を呼び込む、そのためにコーポレート・ガバナンス改革が行われているのではなかったのでしょうか。時間軸が違いすぎます。

今回のRMBの呼びかけについて、専門家の評価は割れている。コーポレートガバナンスに詳しい山口利昭弁護士は、「取締役会の制度が3つに増えたのだから、これまで以上に会社側は説明責任を問われる。監査役会設置会社に留まる場合も、他の形態に移行せず留まる合理的な理由を説明すべき。正論で議論しようという株主が登場してきたことは高く評価したい」という。
これに対し株主総会実務に詳しい川井信之弁護士は「まだ機関投資家と正面から正論で議論することに慣れていない場合も少なくないのが日本の経営者。拙速に強硬策を取ることは警戒して態度を硬化させることになりかねないのでは。実効性を高めるなら、徐々にでも、相手が受け入れやすいアプローチが結局は効果的だと思う」と言う。
オプトは創業者と電通が発行済みの4割強を握るが、監査等委員会設置会社への移行は定款変更を必要とするため特別決議の対象。可決には2/3の賛成を必要とする。逆に1/3以上の反対で否決される。そこにRMBは勝機を見いだしている。
結果はどうあれ、安直な移行ブームに一石を投じることは間違いない。

 (撮影:尾形文繁)

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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