【産業天気図・医薬品】特許切れ相次ぐ「2010年問題」と薬価引き下げがダブルパンチで雨続く

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 大手で唯一、10年問題にはさほど深刻感のない第一三共<4568>は、米国で抗血小板薬を発売したばかり。期待の抗インフルエンザ薬「CS−8958」の申請を年度内に目指しており、早ければ10年の発売ができそうだ。

ただ、子会社でインド後発品大手のランバクシー社は、FDAから工場の安定性試験データ改ざんについて指摘を受けた後、輸入禁止措置を解かれていない。ランバクシーの信頼を早期に取り戻すことが喫緊の課題となっている。

国内の医薬品市場にも暗雲が立ちこめる。高齢化による医療費支出を抑制したい政府の政策により、世界と比較して日本のクスリ市場の成長は鈍化している。国別の市場規模では米国に次ぐ二番手だが、10年前から見るとシェアは半減。替わって伸びてきたのが、インドなど新興国の面々だ。

国内市場が伸び悩むなか、大手各社が海外に拠点を持つ動きが活発化している。武田は開発拠点を、日本から米国へ移動。昨年10月には、塩野義製薬<4507>が米サイエル・ファーマを約1500億円で傘下に収めたほか、つい最近でも大日本住友製薬<4506>が米セプラコール社を約2500億円で買収すると発表した。いずれも米国での販路拡大が狙いだ。
 
 日本市場の縮小は止まらず、国内にしか販路を持たないメーカーの先行きは厳しい。10年4月には薬価(国が定める薬の値段)の引き下げが予定されている。前回(08年)の引き下げ率は約5%だったが、今回は7~9%程度の引き下げ率になるのでは、と業界内で囁かれている。とりわけ、海外比率の低い中小企業や、もともと採算の低いジェネリック専業メーカーにとって、痛撃であるのは間違いない。

(前野 裕香)

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