「並行在来線」が将来直面する深刻な問題

人材と財源不足で"第2の国鉄改革"必要か

一方、幅広い技術やシステムの連携の上に成り立っている鉄道を管理するには、どういう立場であろうと安全にかかわる小さな事象を見逃さない危機管理能力が要求される。行政は、行政としての目的があって数年単位での人事異動が避けられないが、とはいえ数年の異動先といった認識で赴任するなら鉄道会社の要職は厳しいかもしれない。

管理職もJRからの人材供給が難しくなる中、第三セクター鉄道を抱える行政としては、安全運行にどう向き合うのか。担当者だけの課題ではなく、行政全体の施策において鉄道事業をコントロールしていく必要がある。安全が脅かされるようでは困るし、安全の重さに慄いて輸送を預かる人がいなくなっても困るのである。

“核家族化”でノウハウ途切れる

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鹿児島本線当時から海沿いの隘路だった区間をたどる「肥薩おれんじ鉄道」(撮影:目黒義浩)

また、鉄道の世界でも核家族化が進んでしまった。運行管理を司る指令所も、今まではJRの支社単位で全体を俯瞰することができた。

しかし、決して自社線だけで完結しない大幹線が県別鉄道の小さな指令に分けられ、互いが離れてしまうことにリスクが潜む。検修等も同様である。発足まもない段階ではJRと同居のことが多く、陰ながらの支えも得られる。だが、自前の施設を整えて自立の形が整ったとき、逆に蓄積された技術の宝庫から隔離されてしまう。

ことに今後、北陸では福井県が新たな並行在来線会社となったとき、現在のJR金沢支社は在来線については擁する路線が大幅に縮小され、管理する組織もより小さくなるだろう。そうなったとき、北陸の各社にとっての難題のひとつとなる可能性が高いのではないか。

並行在来線会社は本来幹線鉄道であり、現在も引き続き貨物列車が多数運転されている。そのため旅客輸送の規模に対して過大な設備がのしかかる。重厚な設備で精度の高いメンテナンスを継続していかなければならない。税の減免等が行われ、2002年度以降、貨物調整金という国の助成により会社の支出は軽減されているが、維持費用が発生しなくなるのではなく、軽減された分を県や自治体、国が負担しながら存在している。すなわち負担者が利用者か、県民か国民かの違いでしかなく、費用は発生し続けている。

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