京成「AE100形」、さよなら運転の一部始終 成田からの旅立ちを彩った"あの車両"が引退

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2010年には新たに成田スカイアクセス線というルートが完成し、時速160キロメートルで走る新型車両が導入された。スカイライナーの名称は新たな車両に引き継がれ、AE100形は新たに京成本線に設定された「シティライナー」として運行されることになった。そして、2015年12月のダイヤ改正をもってシティライナーとしての定期運転が終了。2月28日のさよなら運転に至った。

さよならツアーの粋な計らい

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東成田駅の3番線に残る「成田空港」の駅名標(撮影:尾形文繁)

同日8時50分に京成上野駅へ入線したAE100形は、ピカピカに輝いていた。「今日のために塗り替えました」と、京成の担当者も誇らしげだ。かつての「skyliner」の文字も側面に書かれている。幌は新品に取り替えた。

さよならツアーでAE100形が走るルートも工夫が凝らしてあった。半年前から考えたという行程は、京成上野駅を出発後、高砂検車区に入り、その後は通常なら走行しない押上線に入って八広駅に停車。本線に戻った後は、いつもの成田空港駅ではなく、東成田駅で停車するというものだった。そう、かつての成田空港駅である。

現在使われていない3番線は、今も「成田空港」という駅名標がそのまま残っている。かつての成田空港駅の状態が保存されているのだ。コンコースには、当時のポスターも展示されていた。昔を懐かしむファンもいた。

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鉄道アイドルの鈴川絢子さんと、初代AE形(撮影:尾形文繁)

東成田駅を出発した後は、現在の成田空港駅を経て、宗吾車両基地へ向かった。行程はこれで終了。以降は撮影タイムと列車部品などの即売会となった。大勢のファンが整然と売り場の前に並んだ。

その中に、鉄道アイドルの鈴川絢子さんの姿があった。この日はプライベートでの参加とのことだったが、快く取材に応じてくれた。鈴川さんは千葉県習志野市出身。「京成沿線民としては非常に寂しい」と言いつつも、「ラストランに乗れてよかった」。

車両基地には、かつてのAE形が保存展示されていた。AE100形もおそらく同じような余生を迎えることになるのだろう。大勢のファンが名残を惜しみつつ迎えたラストラン。一時代を築いた車両の引退は物悲しい。だが、その記憶が新時代を担う車両を生み出す原動力になる。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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