京成「AE100形」、さよなら運転の一部始終

成田からの旅立ちを彩った"あの車両"が引退

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前照灯にはリトラクタブル式を採用した(撮影:尾形文繁)

成田空港の新時代を予見させるデザインはAE形よりも先頭形状が長く、飛行機の翼をイメージした青と赤のラインも相まって、より洗練した印象を与えた。

また、鉄道車両としては珍しいリトラクタブル式の前照灯を採用したことも話題を呼んだ。この前照灯は、カーブの方向に応じて向きを変えることができる。

「初めて運転した日は昨日のことのように覚えています。6月にしては非常に暑い日でした」と、AE100形を初めて営業運転した京成電鉄の海老澤勝三さん(現・京成千葉駅長)は振り返る。

「窓が3枚あって、前方が見づらかった。ノーズが長いので、停止位置にも気を使った。ブレーキもそれまでのAE形とは違う。手に汗握る思いで運転したのが思い出されます」

海老澤さんの口から出てきたのは苦労話ばかり。それだけに愛着はひとしおだ。「運転開始から26年で引退とは早すぎる」と、引退を惜しんでいた。

幻に終わった羽田空港乗り入れ

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旧・成田空港駅(現・東成田駅)に残された「スカイライナーのりば」の案内(撮影:尾形文繁)

AE100形には当初期待されたものの、実際には使われなかった機能がある。車両正面にある非常用の貫通扉である。

トンネル側面と車両側面とのすき間があまりない地下鉄では、トラブルの際に乗客を側面のドアから降ろすことができず、正面にある貫通扉から乗客を降ろす。このため、地下鉄に乗り入れる車両には貫通扉の設置が必須となる。

つまり、貫通扉を備えているAE100形は、京成が相互直通運転をしている都営浅草線や京浜急行電鉄へ乗り入れる可能性が考慮されていたのだ。京急に乗り入れた先にあるのは羽田空港。すなわち、成田と羽田の両空港を結ぶアクセス特急としての役割も期待されていたということになる。

「貫通扉が付いていたので、いよいよ羽田空港にも乗り入れるのかと思った」と、海老澤さんは当時を振り返る。だが結局、羽田への乗り入れは実現しなかった。

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