高まる「4月追加緩和」の可能性 弱い評価が目立つ日銀の景気判断

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ただ、その道のりは、「時間がかかる」との見通し以上に険しさが増す可能性がある。日銀が昨年後半まで最も期待をかけてきた今年の春闘における賃上げ。政府は「昨年以上の賃上げを期待」(安倍晋三首相)はずだが、ここにきて現実のかい離が明白になってきた。

春闘のリード役であるトヨタ自動車<7203.T>が、ベアを昨年の37.5%にあたる月額1500円にする方向となった。その他の大手メーカーも軒並み昨年の半分かそれ以下のベアに抑制する方向にあり、このところ弱さの目立ってきた消費を賃上げで回復させるシナリオが破たんしかねない状況になってきた。

また、マイナス金利決定後の調査だった2月消費動向調査では、消費者態度指数が大きく低下し、消費者の防衛的な行動が復活しかねないとの声も、民間エコノミストの中で出始めている。

懸念強まる海外経済

日銀の懸念をさらに強める要因になっているのが「海外経済の動向」だ。日銀は15日の会合で、消費税率を引き上げた2014年4月以来となる景気判断の下方修正を決めた。

新興国経済を中心に「いく分減速している」との認識を示すとともに、輸出の判断を「足元では持ち直しが一服している」と下方修正。海外経済の減速が日本の実体経済を下押ししていることを認めた。

黒田総裁が何回も指摘してるように、企業収益は過去最高水準に達しているが、現下の世界経済の不透明さを根拠に、設備投資を拡大させる動きは依然として見えない。

日銀がこの日出した声明では「企業コンフィデンスの改善や、人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響がおよぶリスクには引き続き注意が必要」との認識があらためて示された。

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