米国型資本主義のある帰結、本社利益極大化の陰でコカ・コーラボトラーが迎える危機

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ボトラーが減益や赤字になった最大の理由は収益源の自動販売機が不況により職域(事務所、工場など)中心に落ち込んだからだ。日本には220万台の飲料(清涼飲料限定)自販機があるが、このうち98万台をコカ・コーラ系列が占めている。

このほか量販店・食品スーパー向け価格が他社やPB商品との競争で低下していることも大きな影響を与えている。ボトラーにとって最大の収益商品は実はコカ・コーラではなく、缶コーヒー・ジョージアや爽健美茶など日本市場の特性に合った商品である。こうした基幹商品が、「発売から年月を経たことや他社の同類製品の攻勢に遭って、消費者への訴求力が低下している」(ボトラー首脳)ことも影響している。

現在、コカ・コーラグループは缶コーヒーの新製品投入や(カロリー)ゼロのコーラなどの拡販や量販店・食品向けスーパー向け販売価格の是正に乗り出している。自動車、電機など輸出企業の減産緩和によって職域での自動販売機の落ち込みにも歯止めがかかりそうだ。今後、各ボトラーとも最悪期は脱しよう。

米国の関心は日本より中国?

ただ、ボトラーにとって構造的な課題が残っている。それは、「米国本社が長年、日本市場で過大な利益を吸い上げてきたので、製品開発、広告宣伝、生産・物流など各部門での投資不足が感じられるようになっている」(業界関係者)ことだ。

「K4」と業界内で呼ばれる関東地区の4ボトラーは、自社工場のほか共同で飲料工場を持っているが、飲料工場の立地の悪さ、規模の小ささ、老朽化が社内でも認識されるようになり、海外からコンサルタントを招いて、飲料工場の新鋭化を図る構想を持っている。だが、悩みは投資の原資だ。ある業界関係者は、「新たに土地を購入して、規模の大きな新鋭の無菌充填ラインを新設すると1ライン100億円から2000億円は必要だろう」と語る。

あるボトラー首脳は、「現在の厳しい環境でボトラーが利益を上げながら設備投資を行うためには、ボトラーにとって最大の製造原価である原液代を見直す必要がある」と漏らす。ただ、「投資を極小化して利益を極大化」するのが米国企業の経営だ。特にコカ・コーラはその傾向が強い。人口動態から考えて、今後、日本市場の成長は期待できない。日本市場の投資はほどほどにして利益を吸い上げ、成長市場である中国やアジアに投資するほうが合理的な選択だ。だが、そのとき日本の各ボトラーは再編を余儀なくされる。

(内田通夫 =週刊東洋経済)

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