甦る自動車危機の悪夢、各国で補助金の期限切れが相次ぐ

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縮小

再度の減産も

日本に先駆けて今年1月に経年車買い替え補助金を導入したドイツ。景気浮揚策の成功例と言われたが、9月2日、200万台分の予算を使い切って打ち切られた。

現地で一定のシェアを持つ日系メーカー首脳は「作られた需要の結果が心配」と気を揉む。「台数を維持するため、補助金と同じ額を今度はメーカーが販売奨励金として出すことになるのではないか」。

生産調整はようやく一巡したばかりだ。再減産をしたくないなら値引き継続もやむをえない。ただそれは1台当たりの粗利を減らし、企業の体力をじわじわと奪っていく。

奨励金を出さなければ、販売減、生産減の悪循環が待ち受ける。機械を止めるか、工場を閉めるかの判断に迫られるケースも出てくるだろう。

経済が本物の活力を取り戻さないかぎり、補助金というカンフル剤が切れた途端、自動車危機は容易にぶり返す。工場の町から灯が消え、多くの労働者が居場所を失ったあの悲劇を繰り返さない保証は今や、どこにもない。

高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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