“打倒アマゾン”--国内ネット通販王者・楽天が繰り出す迎撃策《アマゾンの正体》
「機械的な販売」VS.「銀座四丁目」
では、楽天はどのようなアマゾン対策を打っているのか。それを一言で表現すると「地道に自社の強みを磨いていくだけ」(執行役員・楽天市場事業編集長の黒坂三重氏)。極めてシンプルなのだが、その中身は奥深い。
黒坂氏は次のように、アマゾンと楽天市場の違いを分析する。「アマゾンは商品を機械的にムダなく販売する場所。それに対し、楽天市場はショッピングそのものを楽しむ銀座四丁目。目指している方向がまったく違う」。
ショッピングを楽しくするためには、何といっても魅力的な出店者を増やし、銀座四丁目を活性化させるに尽きる。そこで、楽天が進めているのが地方にある魅力的な企業の開拓だ。この7月には国内支店として12拠点目となる愛媛県の松山市に支店を開設。支店を通じ、地域の出店者と顔の見える関係を築きキメ細かいサポートをすることが狙いだ。昨年7月には、全国47都道府県それぞれの名産品を扱う特設コーナーとして「まち楽」を開始しているが、これも地方からの中小企業の出店を強化する試みだ。
ショップの連合体ゆえに課題となっていたスピード配送にも、楽天独自の方法で解決策を導き出した。昨年10月、「あす楽」と名付けたサービスを開始。これは当日12時までに注文すれば翌日には届く、というサービスである。アマゾンの「お急ぎ便」を意識したサービスだが、違いは楽天自身が在庫を持つことなくスピード配送を実現していることだ。
しかも対象エリアは、日本全国。アマゾンが自社の物流センターの立地に制約され、大都市圏に限られているのと比べ、その差が際立つ。なぜ全国でのサービスが可能なのかといえば、北海道から九州までを10エリアに分け、そのエリア内で売買をマッチングさせるからだ。「点と点をつなぐこの仕組みを生かすと、朝取れたてのきゅうりを翌日に届けられる。自社倉庫方式では新鮮なきゅうりは届けられない。地産地消の推進にもなり、環境にもやさしい」(黒坂氏)。
市場全体のにぎわいの演出にも余念がない。時間限定で大幅な値下げ販売を行うタイムセールの充実、中古品の取り扱い強化など、お買い得感の追求に力を入れていく。
「楽天は自分自身では小売りをしない。そのため、話題づくりやトレンドづくりなど、ショップのビジネスチャンスにつながるような仕掛けに専念できる。ショップと正真正銘、ウィン−ウィンの関係を保てることが、楽天の強みだ」(黒坂氏)。