“打倒アマゾン”--国内ネット通販王者・楽天が繰り出す迎撃策《アマゾンの正体》
社内のいたる所に「打倒アマゾン」と書かれた大きなポスターが張られ、定例ミーティングには幹部社員が「打倒アマゾン」とプリントされたTシャツを着て集まる--。日本最大のショッピングサイト「楽天市場」を運営する楽天は今、猛烈にアマゾンを意識している。
とはいえ、楽天は断トツであることに変わりはない。総売り上げ、訪問者数、総利用時間などあらゆる指標で他社を寄せつけない圧倒的ナンバーワンだ。しかも、楽天とアマゾンのビジネスモデルは大きく異なっている。物流センターに在庫を持ち、受注、決済から配送までをすべて自己完結で行うアマゾンに対し、ショッピングモールの楽天市場はいわば場所貸し。ビジネスモデルが違う以上、それほどアマゾンのことを意識する必要もなさそうだ。
「打倒アマゾン」は、独特の体育会系の社風から来る“お祭り”にすぎないのだろうか。
実はそうではない。アマゾンは今、急速に楽天の「おいしい部分」に食い込んできているのだ。2007年4月にアマゾンジャパンは、優良な出店者を集めてテナントサービスを開始。今では、130社以上の店が並ぶようになった。7万社以上が出店する楽天市場とは比べものにならないが、急成長企業や有力ブランドを囲い込まれてしまえば、楽天にとって面白くない。
取り扱う商品のジャンルも急速に拡大させてきている。今では楽天市場が得意とするファッションや食品にまでウィングを広げている。油断すればテナントとユーザーを根こそぎ奪われるかもしれない--そんな危機感が三木谷浩史社長の心の中にはあるのだ。