●ユニークな先生やいたずらな同級生の思い出
先生の思い出というと、きちっと勉強を教えてくれた先生よりは、いい加減な先生のほうが記憶があります。古文を教えてくれた板谷先生という人がいて、有名な陶芸家のご子息なんですけど、みんなで「オバケ、オバケ」って言っててね。国語を教えてくれるんだけど、これは100点満点で10万点!っていうような調子で講義をしていて、今でも仲間と「あれは10万点だったなとか、5万点だったな」って、そんな話を50年経った今でもしますからね。板谷先生に限らず、割合に長く勤めたユニークな先生がいましたね。
私はわりと優等生でした。勉強もできましたし、優等賞もとって卒業して、そんなに叱られたりはしませんでした。
友達ではいたずらなのがたくさんいましたからね。
同じクラスに後に著名な作曲家となる猪俣公章がいました。彼は勉強なんかしないで、当時から作曲したりしていましたし、現在大手出版社の取締役をしている人がいますが、当時はタバコを吸って停学になってましたからね(笑)。4年くらい前に彼に開成学園の理事になってくれと頼んだら、「理事になるのはいいんだけど、俺は停学になったんだぞ。そんなのが理事になっていいのか?」っていうからむしろそういう人がいいんだって、言ってるんですけどね(笑)。
小学校時代は、開成のすぐ近くの文京区の区立の小学校に通っていました。小学二年生からの同級生で開成中学・高校、そして、東大法学部に入ったやつがいましてね。彼は、小学二年生の頃からものすごい秀才でしたね。私も勉強はできるほうだったんですが、世の中にこんなに勉強のできるやつがいるのかってくらい勉強ができてね。小学二年から大学出るまで一緒にいたやつがこんなに優秀だったという経験は、自分がお山の大将にならず、うぬぼれた気持ちも持たずに済み、とてもよかったことだと思いますね。
●クラブ活動で人間関係を学ぶ
運動部ばかりじゃないけど、中学、高校時代のクラブ活動というのはすごく大事だと思います。先輩後輩との人間関係というのが、ここで自然にできますよね。それからなんていったって我慢すること。そのことはもう運動だけに限らないですよね。最近、塾の存在が大きくなっている。塾を否定はしないけど、クラブ活動が疎かになっちゃうのが心配です。授業で何かを勉強するよりも、本当に高校時代のよさっていうのを味わえる。これは、授業以外の学校の「活動」だと思っているから、それが塾にとってかわってしまうというのは残念な気がしますね。
●鎧を脱いで語り合える友
大学も非常に面白かったのですが、東大の教養学部で一緒だったドイツ語クラスの仲間とは、今でも毎月クラス会をやっています。飲むのももちろんなんだけど、旅行や音楽会、句会をやったりしていて、とうとう最近になって文集を出そうとなり、年に二回「ゆうゆう」という文集をだしています。これは、昭和100年までか、仲間が3人になるまでか、どっちかまで続けようといってますね(笑)。
もうひとつ思い出といえば、私の家は本郷の東大の赤門の真ん前にあるのですが、そこにみんなが集まったことですね。父は雑誌の編集者でしたが私の両親は、学生が家に来るのが好きな人で、私がいなくても、友達が毎日、5人とか10人とか家にいました。開成時代の仲間もですが、大学のクラスメートだったり。母が、集まった子ども達に飯を食わせるのが趣味みたいな人で、今でも友達が集まると、「お前のお袋には飯食わせてもらったよな」って言います(笑)。そんなことがクラスの結束を強くしたのかもしれませんね。
東大の仲間というのは会社でもみんな偉くなるし、役人では次官くらいにはなるし、現役の頃というのは、少し張り合った気持ちもあるからか、あんまり仲良くない。でも、今はもうみんなリタイヤしていますから、そうすると、悠々生活に入って、鎧を脱いで本当に仲良くなるんでしょうね。
(取材・撮影:田畑則子)
加藤丈夫<かとう・たけお>
1938年東京都生まれ。
開成中学校・高等学校卒業。1961年東京大学法学部卒業。
同年富士電機製造株式会社入社。代表取締役副社長、会長を経て、2004年6月から富士電機ホールディングス相談役。2000年より学校法人開成学園理事長兼学園長。経済同友会「学校と企業・経営者の交流活動推進委員会」委員長。2005年7月に厚生年金基金連合会理事長に就任。
著書に、『「漫画少年」物語-編集者・加藤謙一伝』(都市出版)がある。
1938年東京都生まれ。
開成中学校・高等学校卒業。1961年東京大学法学部卒業。
同年富士電機製造株式会社入社。代表取締役副社長、会長を経て、2004年6月から富士電機ホールディングス相談役。2000年より学校法人開成学園理事長兼学園長。経済同友会「学校と企業・経営者の交流活動推進委員会」委員長。2005年7月に厚生年金基金連合会理事長に就任。
著書に、『「漫画少年」物語-編集者・加藤謙一伝』(都市出版)がある。
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