あなたはiPhone「ロック解除」で丸裸になる 本当に怖いことが起こるのはこれからだ
仮に、すべての端末がユーザーをモニターでき、捜査当局が裁判所命令の下にすべての端末の中を見られるのであれば、真にプライベートな会話は成り立たなくなるのではないだろうか。私たちは、もはや秘密を持つことができない世界を築いているのではないだろうか。
自由な思考もできなくなる?
ワシントン大学法学部のニール・リチャーズ教授は言う。「これは一度きりの問題ではない。これは将来についての問題だ」。
リチャーズ教授は『知的プライバシー(Intellectual Privacy)』という本を執筆している。同書は、社会において監視の恐れなく思考できる可能性が、テクノロジーと法律が共謀することにより消し去られる、という危険性について検証する。リチャーズ教授によると、知的創造性はプライバシーという基盤の上に成り立っているが、このプライバシーが、私たち自らが周囲に設置しているカメラやマイクやセンサーにより崩壊しつつあるという。
「私たちがつねにモニターされ、監視され、記録されているなら、物議をかもすような考え方や、エキセントリックでおかしい、風変わりな考えを試すことに尻込みするようになるだろう。だが、私たちが今とても大切にしている考え方は、かつては物議をかもすようなものだったのだ」。
リチャーズ教授の言葉は、心配が過ぎるように聞こえるかもしれない。特に、FBIがスマートフォンへの侵入をアップルに求めるのは今回だけだ、というFBIの主張を信じる人たちにとっては。
FBIのジェームズ・B・コミー長官は、2月21日に投稿したブログで次のように述べた。「今回の法的問題は、実際は非常に限定的なものだ。われわれは単純に、テロリストのスマートフォンを自己破壊させることなく、パスコードを解明したいと願っているだけだ。10年間もかけることなく解明したい。ただそれだけだ」。
機器が正常に動く限り盗聴できる
だが、市民の自由に関する活動家らは、コミー長官の言葉をなかなか信じられないようだ。なぜなら、政府がこれまで長い間、新たな技術への対応の仕方を、古い技術の訴訟事例を基に判断してきたという事実があるからだ。1960年代と1970年代に、裁判所はアナログの電話を盗聴するためのルールをつくった。そのルールが、のちにインターネットを監視するための基盤として適用された。
米国自由人権協会のプリンシパル・テクノロジストであるクリストファー・ソゴイアンは言う。「第三者が保管したデータに関しては、憲法上の保護はほとんど受けられない。これには、1960年代の最高裁の判決が大きく影響している」。
ソゴイアンは、政府がすでに接続機器を監視用の機械に変えていると指摘する。10年以上前の犯罪組織による事件では、車のダッシュボードにつけるロードサイド・アシスタンス機器のメーカー対して、FBIは自動車内の私的な会話を秘密裏に録音するよう依頼した(ここで対象となった機器は、車載テレマティクスの「オンスター」のようなもので、オンスターは緊急の場合に携帯電話でオペレーターに自動連絡などを行う)。裁判所はFBIの依頼に否定的な判決を下した。ただし、車内の盗聴がその機器の正常な稼働を妨げる場合には、という非常に限定的な条件をつけた。