アップル、「サンフランシスコ新拠点」の狙い クパチーノへの一極集中主義から変化
[サンフランシスコ 3日 ロイター] - 米アップル<AAPL.O>の幹部らはこれまで長い間、カリフォルニア州の郊外にあるクパチーノの本社での勤務を従業員に求めてきた。しかしその姿勢も変わりつつあるかもしれない。
故スティーブ・ジョブズ氏と共にアップルを創業したスティーブ・ウォズニアック氏によると、同社は従業員を1カ所に集中させることで最高経営責任者(CEO)が「皆の徒歩圏内」にいることを可能にできたという。
しかしアップルは現在、サンフランシスコのサウス・オブ・マーケット(SOMA)地区に新たなオフィスを開設する準備を進めている。SOMAは将来性のある新興企業がひしめき合う地区で、賃料の高いことで知られている。
従業員のニーズに対応
競合するグーグル<GOOGL.O>やリンクトイン<LNKD.N>などは既に数年前にサンフランシスコに拠点を構えた。人材採用担当者やアップルの元従業員らは、本社から46マイル離れたサンフランシスコにオフィスを設置するというアップルの決定は、同社が従業員のニーズに対応する姿勢に変わりつつあることを意味していると話す。
アップルの新オフィス設置は、情報技術(IT)業界で優秀な人材の獲得競争が激化していることや、若い人材が都市での勤務を圧倒的に好む傾向にあることを示している。
シリコンバレーのライバル企業は人材獲得のために様々な「特典」を提供してきたが、アップルはその流れに乗ることはしていなかった。現在でも無料のランチは提供せず、通勤用シャトルバスの運行開始も他の企業から大きく遅れてのことだった。
「これまでのアップルの態度は常に、『アップルで働くということは特権だ。嫌なら、ここで働きたい人はそこらじゅうにいる』というものだった」と語るのは、同社の元従業員で現在は企業向けIT会社インクリングのCEOを務めるマット・マッキニス氏だ。しかし今では状況は変わり、優秀な人材確保のためアップルは他社と競わなければならないとの見方を示した。同氏はアップル勤務当時は毎日3時間かけて本社に通勤していたという。