スズキがインドで独走、市場シェア6割に接近 

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旧ビッグスリーの技術者をヘッドハント

リッツやジャズは秋のディワリ祭という最大需要期へ向け、むしろこれから本格的に動き出す。7月頭に政府が発表した新年度予算に追加的減税が盛り込まれなかったことから、買い控えていた層が一斉に買いに動く期待もある。インド自動車工業会は当初、3~5%程度の成長を予想していたが、遠からず上方修正する可能性が出てきた。

同じく政府予算では農業分野へ手厚い配分がなされており、農村や地方都市での購買増も期待できる。マルチスズキの販売に占める地方比率は10%に接近している。「セールスマンや販売店を増やしてきたし、今後も増やす」(中西社長)。農家の収入は豊不作に左右されるが、自分たちには車種も、店もある。後は恵みの雨を待つだけだ。

マルチスズキの第1四半期純益は前期比25%増の113億円となった。スズキの通期純益予想50億円の倍以上をすでに稼いだ。今やインドは日米の不振を補い、スズキが黒字を維持するための屋台骨だ。その分、責任も重くなっている。

5月、マルチスズキは米デトロイトに“上陸”した。狙いは旧ビッグスリーである。「GMやクライスラーからあぶれたインド人技術者がいるんじゃないかと。100人面接して、10人近くがインドに戻ってきていいと言ってくれているようだ。研究開発人員は現在730人に増えたが、これを1000人には持っていきたい」(中西社長)。

インドには今後、トヨタ自動車や日産自動車、フォルクスワーゲンなどが本格参入する。資本力で劣るスズキは開発をさらに早め、リードを広げておく必要がある。その差はいくら大きくても困りはしない。

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高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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