化学業界の憂鬱、期初に思わぬ中国特需でも期央からは腰折れ懸念
各社が決算をとりまとめた3月時点で想定していなかったのが、中国向け輸出の想定以上の回復だ。中国の内需刺激策の影響で各種石化製品の需要は増加し、エチレン換算の輸出比率は3月に過去最高水準の66%を記録した。4月も52%と高水準を保っており、回復が鈍い内需を、中国需要の拡大により補う形で、稼働率は上昇した。第1四半期(09年4~6月期)の着地を控えめに見ていた各社にとって中国需要の急激な立ち上がりは福音で、8月以降に発表される第1四半期の業績は、対通期業績の進捗率で会社計画線を上ぶれる可能性もありそうだ。
問題は残る第2四半期以降だ。期待の中国向け輸出では、「在庫積み増しの完了、先安感の台頭等でいずれ急速に購買量を落とし、市況が冷える可能性は高い」(ゴールドマンサックス証券の横尾尚昭アナリスト)との指摘も既に存在する。また「(市況のかく乱要因となる)中東生産品の流入の影響はまだないが、秋以降は徐々に立ち上がってくるだろう」(同協会副会長、昭和電工社長の高橋恭一氏)、「稼働率が95%近くになったからといって全社がハッピーになれるわけではない。依然需給ギャップが残る日本の石化業界を取り巻く環境は厳しい」(藤吉会長)と、懸念材料に事欠かないのが実情だ。
他方で、化学メーカーの事業ポートフォリオ上、石化事業と対をなす液晶材料、半導体材料などの電子材料事業は、石化よりも早く年初に底入れを見た。ただ、電材事業も石化事業と同じく中国向け輸出の頭打ちや、国内需要の長期停滞など不透明感は強い。期央からは、踊り場を迎える公算が高そうだ。
「景気底入れを前提としても、多くの企業で未達リスクは高い」(横尾アナリスト)今期の化学業界。過度に悲観論に陥る必要はないが、第1四半期が思いのほか、好調だとしても、第2四半期以降の業績動向には、今まで以上に注視する必要がある。
(二階堂 遼馬=東洋経済オンライン)
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