頓挫する「貯蓄から投資へ」の誘導策、投資選択は個人の主体的判断、国は中立スタンスに徹すべし

金融税制は中立で簡素に

第三は、投資を促す理由とされる直接金融の活性化が、必ずしも的確とはいえないことだ。

株を買うとおカネは売った人に回る。直接、企業に入るわけではない。投資資金は流通市場を行き来するだけで、企業が新規に発行する株を直接購入するケースは少ない。エクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)が低迷している現状ではなおさらだ。つまり株を買えば直接金融の活性化につながるという論理は不適切である。小宮氏は、「非上場の中堅・中小企業は、資金調達のほとんどを銀行に頼っている。預貯金としてそこに回るおカネが、株や投信に振り向けられたら、むしろマイナス」と指摘する。

第四は、スローガンに基づいて導入された証券優遇税制が、金融・証券税制全体のあるべき姿を歪めてしまっていることだ。

03年に導入された証券優遇税制は、当初、5年間の期間限定措置だったが、2度延長され11年度まで続く予定になっている。だが、これまでと同様、税率を10%から本来の20%に引き上げようとすると、株式市場はパニックに陥ることが予想される。株価低迷と重なれば容易に引き上げられないだろう。

金融・証券税制の理想形としては、03年6月の政府税制調査会の中期答申で示された「金融所得一体課税」が望ましい。現在、預貯金利子や公社債利子、公社債投信の分配金は20%で課税され、株式や株式投信の売却益や配当・分配金だけ10%に軽減されている。株の売却損が出た場合は、株の売却益との内部通算は可能だが税率の違いがネックとなり、預貯金利子などとの通算はできない(今年度から株の売却損と配当の損益通算は可能に)。そこで税率を20%に統一し金融所得全体で損益通算できるようにするのが、金融所得一体課税だ。現状よりは中立で簡素な税制といえる。

金融税制に詳しい中央大学法科大学院の森信茂樹教授によると、「金融商品ごとに税率が異なるのは好ましくない。12年度から金融所得一体課税を導入すべきだ。源泉徴収口座をうまく使えば十分可能なはず。金融取引における経費や損失の概念も明確にし、金融所得間の損益通算を認める。そのほうが税制として中立でリスクテイク能力も高まる」。

国民の資産運用に関して、国はあくまで中立に徹すべきではないか。

(柿沼茂喜 =週刊東洋経済)

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