マイナス金利で「金価格」が逆行高するワケ 1月中旬から1割上昇、小売店の販売も活況

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一般的に金における日本人の売買行動は、逆張り投資が目立ち、安値圏で買い越し、高値圏で売り越すパターンが少なくない。2013年の高値5000円水準に近づくと、売りが多くなる場面も予想されるが、高値の水準が切り上がっている可能性もある。2015年の国内平均価格は、2014年比で1グラム当たり220円上昇。田中貴金属でも年間の金販売量は2割増加した。

そもそも利息のつかない金は、利回り計算ができず、適正価格の算出材料に乏しい。これまで採掘された量は約17万トンと、オリンピック公式プールの約3.5杯分。埋蔵量は5万トン程度と推測されるものの、採掘が難しいために、毎年の産出量は3000トン前後にとどまる。

金の保有はあくまで「保険」

過去に採掘された金の時価は合計で800兆円弱。日本人の金融資産は約1700兆円あり、その一部でも金投資に回れば価格がハネ上がってしまうほど、小さな市場だ。

もっとも、資産としての金は、あくまでまさかの事態に備えるための保険、としての位置づけである。「金の現物を買うのは積極的に利益を狙う株式投資家と違うタイプが多い」(田中貴金属)。亀井氏も「経済環境が良好ならば、保有している金の価格が上がらなくても、多くの人にとって問題はない」と、中長期での保有を勧めている。

世界景気変調とマイナス金利導入で、人気に火がついた金。「消費や投資を刺激する」(日銀・黒田東彦総裁)ことを狙ったはずが、将来の生活不安に備えた資産防衛で金が売れているとしたら、こんなに皮肉なことはない。

「週刊東洋経済」2016年3月5日号<2月29日発売>「核心リポート01」を転載)

藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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