欧州で大きな踏切事故がなぜ減らないのか? オランダでは立体交差化が進みにくい事情も
ヨーロッパ諸国でも、主要幹線では立体交差化が進められており、特に西側諸国では、地形上やむをえない場合など、一部の例外を除いて踏切はほとんどなくす方向にある。また中欧諸国も、近年はインフラの整備改良が急速に進んでおり、特に旅客列車が時速160km以上で走る路線は、ほとんどすべて立体交差化を完了させる予定だ。
ポーランドの首都ワルシャワと古都クラクフとの間には、在来線とは別に高規格の新線「CMK Fast Line」と呼ばれる路線がある。いわゆる「高速新線」であるが、これまで機関車が牽引する客車列車が中心で、最高速度も時速160km止まりであった。
それが昨年、アルストム社から最新の特急列車ペンドリーノED250型車両を導入したことで、ようやく西欧諸国並みの時速250km運転を行なうことが可能になり、現在そのための準備が進められている。
先日、取材でその路線の沿線撮影へ出かけた時のこと、レンタカーで線路へ近付いて行くと踏切が現れた。まさか高速新線に踏切があるとは思わず、最初は別の路線ではと思ったのだが、すぐにこれが高速新線の踏切であることに気付いて驚いた。
もっとも高速新線とは名ばかり、以前は在来線の別線という位置付けで、それほど高速運転をするわけではなかったため、踏切があっても問題がなかった。そう、準備とはつまり、現在もこの路線に残る高速運転には向かない踏切などを撤去することであり、事実、脇には真新しい高架橋が掛かっていた。
チェコでも、首都プラハと第2の工業都市ブルノ間の幹線で、時速160km以上の高速運転を計画しているが、その実現にはすべての踏切を撤去し、立体交差にすることが条件とされており、今後工事が進められていく予定だ。
ローカル線に潜む危険、対策は
一方でオランダに限らず、ヨーロッパ諸国の地方路線には今も多くの踏切が残っており、こうした路線はつねに今回のような危険をはらんでいるということだろう。
ドイツの有名な観光地、ノイシュバンシュタイン城の玄関口であるフュッセンへのローカル線は、風光明媚な路線として有名だが、至る所に踏切が存在し、遮断機や警報機がない踏切も数多く存在する。列車は踏切を通過する前には必ず汽笛を鳴らし、特に警報機もないような場所では少し減速をしながら通過していた。
この路線は高原を走ることから、カーブが多く速度も遅いので、事故の発生する可能性は低いだろう。だが、今回オランダで発生した事故現場のように、直線で高速走行するような場所では、重大事故へと繋がる可能性が高まる。ある一定以上の速度で走る路線の場合、立体交差化は必須の条件となるが、事情によってそれが難しい場合、踏切では列車を減速させるか、車の通行を制限・禁止させるか、あるいは日本の鉄道に普及しているような障害物検知装置の設置を進めるなど、対策を講じる必要があるだろう。
踏切という平面交差が存在する限り、どれほど入念な対策をしても、事故の発生を完全に排除させることはできないが、それが死傷者を伴う大事故へと発展する可能性を最小限に食い止めることはできるはずだ。
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