オーガニック食品が健康にいいとは限らない 有機畜産物が体にいい本当の理由とは
有機食品のほうがそうでない食べ物より健康的なのかどうかについての激しい議論が、今回の研究でさらに過熱するのは間違いない。専門家の間でも、両者の間にはっきりした栄養的な違いはないと考える人もいれば、有機食品のほうがずっと体にいいと言う人もいて意見は分かれている。
有機畜産物と聞くと抗生物質やホルモン剤、遺伝子組み換え餌を与えずに育てられた家畜というイメージが思い浮かぶだろうが、オメガ3脂肪酸が多く含まれている理由はそこにはない。
その理由は野外で飼育するという有機畜産に求められる要件のほうにある。有機牛乳や有機牛肉の牛は牧草を食べて育つが、普通の牛は穀物を与えられるからだ。
餌が違えば従来農法でも同じ結果
「有機農法の魔法とかいう話ではない」と、研究に参加した有機農業コンサルタントのチャールズ・ベンブルックは言う。「何を餌として与えられるかという問題だ」
有機農法で育てられていなくても、牧草が餌の大部分を占める牛であれば同じような結果が出ると専門家は言う。「単純な話だ」とベンブルックは言う。
今回、研究チームは牛乳について196本の論文を分析。肉についての研究論文はもっと数が少なかったため、肉の種類は問わず67本の論文を対象とした。「たくさんの論文をまとめて分析しないとメタ分析にはならない」とライファートは言う。
2年前、ライファートは同様の研究を果物と野菜について行った。この時には、有機栽培もののほうが一部の抗酸化物質を多く含み、残留農薬は少ないとの結果が出た。
食品に含まれるオメガ3脂肪酸にはさまざまな健康増進効果があるという点で、栄養学の専門家の意見はおおむね一致している。米農務省は2010年に食生活ガイドラインを改定、オメガ3が豊富に含まれる魚の摂取を増やすよう国民に呼びかけた。
有機肉や有機牛乳にオメガ3が多く含まれるのは、穀物よりも牧草のほうが含まれるオメガ3の量がずっと多いからだ。「私たち人間が家畜が栄養を摂取する基本的な方法を変えてしまった。おかげで家畜から得られる製品の栄養組成も変わってしまったわけだ」とベンブルックは言う。
今回の研究では、やはり不飽和脂肪酸の一種であるオメガ6脂肪酸については、有機肉や有機乳製品のほうがやや少ないという結果が出た。オメガ3やオメガ6は人体が機能するには欠かせない物質だが、人間はどちらも体の中で作ることはできない。