上野樹里、「30歳からは内面の充実が大事」 カメレオン女優が三十路を前に思うこと

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さて、そんな上野さんが、現在、エネルギーの大半を注ぐのがドラマ『家族ノカタチ』。巷で話題の“こじらせ系”にフォーカスする本作において、上野さんは、大手商社に勤務する32歳バツイチ独身、再婚できない“こじらせ女子”葉菜子に扮している。このところ『アリスの棘』『ウロボロス』といった復讐劇への出演が相次いでいたが、今回の演技は、それらとは打って変わり、伸びやかで自然体だ。

「今まで数々のヒロインを演じさせていただきましたが、大抵は普段の自分より背伸びしようとしがちでした。役者は監督のやりたいことを実現するために機能する存在だと考えているので、背伸びが求められれば応じるのは当然。そのせいか、例えば自分が泣かなければ観てくださる方の涙を誘えないと思い込んでいました。それが『家族ノカタチ』では必要とされない。与えられたセリフを違和感のないように発すればいいんです。最初は戸惑いもしましたが、案外、そのほうが私の素が出ておもしろがられたり、言葉が素直に届いて感動したりしてもらえる。刺激的な発見でした」

30歳からは内面の充実が大事

ところで、役者の醍醐味とは、様々な人間の人生を疑似体験できるところにある。上野さんは、今回の葉菜子役から恋愛に関するひとつの教訓を得たようだ。

「本質を見逃しちゃいけない、ということですよね。今の時代、すべてが数字で表せると思うんです。わかりやすいのが年齢や収入。でも、それを追っていくと、そんな人はいないという結論に陥りがち。条件に当てはまらないからという理由でよく知ろうともせずに落としてしまった人の中には、自分が居心地よく感じられる人がいたかもしれないんです。それから、SNSも上手に使わないと。手軽だから出会いは増えるかもしれないけど、その反面で深く長く付き合える相手は減っている。ひとりひとりがハートを逞しくして、“感じる力”を意識的に駆使しなければ生き抜けないような気がします」

上野さんの口ぶりは決して熱いわけではない。しかし、その奥には芯の強さが伺える。その印象を伝えると、こう返してくれた。

「私も今年で30歳。30代は20代より内面の質が問われると思っています。女優として輝けるのも、女優以外の時間をどう費やせるかにかかっている。ただ台本に追われるのではなく、時には気分のままにどこかへふらりと出かける。その点が線になるような人や物との出会いを大切にしていきたい」。

そう言い切った瞬間、上野さんの目には力が宿った。実に印象的だった。

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