アップル躍進が示す“計画的陳腐化”の終焉 「モデルチェンジ」の時代は終わった

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モバイルパソコンのパナソニック「レッツノート」は02年以来、マグネシウム合金の軽量・堅牢なデザインを維持し、モバイルパソコンの定番の地位を固めた。レッツノートは20万円以上するため決して安くはない。しかし、定番化したことにより、実はオークションサイトなどの中古機市場では、5年以上前の古いレッツノートが5万円程度で取引されている。将来の売却までを考えれば、それほど高くはないと考えることもできるのだ。コンセプトを変えず、モバイルという狭い分野で「定番」の地位を固めたことが勝因だろう。結果的に、大手メーカーが軒並み赤字に苦しむ中で、安定的な利益を稼げている。

売り手主導で大量のラインナップを頻繁にモデルチェンジしていては利益が出なくなるのは当然だ。しかし、大手メーカーにとって製品開発は花形部門。次々に新製品のアイデアを出すうえ、社内での発言力も大きい。ゆえに次々に新製品を出す“惰性”が続く。

にもかかわらず、多くのメーカーは「過剰な生産設備をどうするか」という具合に工場の現場にリストラの議論を集中しがちだ。だが、これは責任転嫁である。本当に過剰なのは工場ではなく開発部門なのだ。

GMは今回の破綻により「キャデラック」「シボレー」「GMC」「ビュイック」に絞り込む。広がった戦線の縮小であるが、これをもって「敗退」と決め付けることはできない。今ではすっかり復活をしたアップルも97年には破綻の瀬戸際にあり、製品の大幅な絞り込みを進めた。この段階で今の飛躍を予測できた人はいないだろう。

肝心なのは、開発要員を減らすことだ。そうすれば毎年のようにモデルチェンジを行うことなどできず、長寿命製品を志向せざるをえなくなる。惰性のモデルチェンジから脱し、体質転換をしなければ、次の飛躍は難しい。

(撮影:尾形文繁=週刊東洋経済)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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