アップル躍進が示す“計画的陳腐化”の終焉 「モデルチェンジ」の時代は終わった

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そもそも、「計画的陳腐化」は、1920年代に生まれたビジネスモデルだ。米GMの礎を築いたアルフレッド・スローンは、フォードが単一モデルを大量生産するビジネスモデルだったのに対し、部品メーカーなど裾野産業を巻き込んで年1回モデルチェンジを行う生態系を形作り、これが米国民の生活の多様化とマッチ。モデルチェンジに割賦販売、中古車の下取りなどを組み合わせ、現在まで続く自動車産業のビジネスモデルを構築した。

このモデルは多くの業界に広がった。短期間のモデルチェンジには、技術革新を速やかに製品に反映させるメリットもあった。だが、先進国の消費者の考え方は変わってきている。米国では住宅価格下落による逆資産効果により、個人消費の減退が長期化する方向だ。そこに地球温暖化問題を背景とした環境重視という流れも加わる。むしろ、20年代までに一世を風靡したフォードのモデルがフィットするようになっている。6月1日のGM破綻は、一つの時代の終わりの象徴である。

惰性で続くモデルチェンジ

見回せば、こうした現象--長寿命製品が顧客の支持を得る--は、すでに多くの分野で起きている。

ゲーム業界はアップルよりずっと先輩だ。任天堂は、ハードウエアとソフトウエアの分離により、製品寿命にも相当する5~7年にわたってハードを陳腐化させないモデルをすでに確立している。任天堂の「ニンテンドーDS」では、04年発売の初代、06年発売のライト、そして08年発売のカメラ付き新製品がいずれも継続的に販売されている。旧モデルも廉価版として売り続けるアイフォーンと同じモデルだ。

それに対し、収益悪化に苦しむ日本の電機メーカーは、頻繁なモデルチェンジを繰り返すサイクルから脱却できていない。携帯電話端末は相変わらず1年に一度はフルモデルチェンジを行っており、パソコンも年1回、デザインからラインナップまで劇的に変えるのが常識だ。

こうしたメーカーからは「任天堂やアップルはソフトで稼いでいるから、こうした芸当ができる」との反論があるかもしれない。が、ハードのみに収益源があるメーカーでも、やはり長寿命化が支持を得ている。

 

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