EU離脱か残留か、イギリス国民投票の衝撃度

離脱のリスクを過小評価してはならない

また、スコットランドの住民投票では、投票直前に離脱派の勢いが増したことを受け、キャメロン首相を始め主要政党の党首が揃ってスコットランド入りし、更なる権限移譲と英国残留を呼び掛けた。今回はEU改革案での合意を受けての国民投票であり、その後の世論調査で離脱派が優勢となっても、EU諸国が改めて英国に今回の合意以上の権限移譲を約束する可能性は低い。

欧州委員会のモスコビシ経済・通貨担当委員は首脳合意後のインタビューで、EUとしては英国の国民投票の結果を静観する構えで、残留キャンペーンに関与することはない、と答えている。投票日までの間に難民問題やテロ事件など、英国民の反EU機運を高めかねない事態が発生した場合、英国内の世論が離脱に傾く恐れがある。「さすがに離脱は回避されるだろう」と高をくくっていると足元をすくわれかねない。

英国がEU離脱を選択すれば、波紋は大きい

国民投票が英国経済や世界経済に与える影響は、(1)投票日まで、(2)投票後から離脱が確定するまでの間、(3)実際に離脱した後の3つの時期に分けて考える必要があろう。

まず投票日までの間は、投票の行方を巡る不透明感の高まりから、新規の設備投資や海外からの直接投資が手控えられ、英国経済を下押しすることが予想される。こうした影響の一部は既に顕在化しているとみられるが、今後の世論調査で離脱派が優勢となればなるほど一層大きくなる。また、世論調査に一喜一憂し、英国関連の金融市場のボラリティリティが高まる可能性がある。ただ、投票日までの期間が短く、英国の景気拡大を脅かすほどのものとはならないだろう。

投票結果が残留となれば、英国の通貨や資産は買い戻され、手控えられていた投資が再開することで向こう数四半期の景気が上押しされる。

他方、投票結果が離脱となれば、離脱後の英国経済を巡る不透明感が一層高まるほか、金融市場の激しい動揺も相まって、英国景気に深刻な影響が及ぶことが予想される。経済活力の低下、経常赤字の拡大、金融部門の弱体化などに対する懸念が高まり、英国の国債や銀行の格付けは引き下げられ、資金調達コストが上昇することが懸念される。ロンドンの地価暴落が金融部門の経営難に拍車を掛ける恐れもある。金融市場の動揺が英国の重要産業である金融部門を直撃すれば、その影響は英国のみならず全世界的に広がるだろう。

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