資生堂「子育て女性に優しい」の先にあるもの

女性活用ジャーナリスト・中野円佳氏に聞く 

――男性の育休は言い出しにくいという問題もある。

現在、正社員に関しては「パタニティー・ハラスメント」の方が「マタニティー・ハラスメント」よりも、深刻だと感じる。ある企業で、2週間程度の育休を取った男性社員について、次の異動のときに地方転勤させた例を2つ知っている。育休を取るということは、その人が家庭にとって必要だということ。それなのに、定時で帰るどころではなく、転勤によって家庭への貢献度をゼロにしてしまうという。2人でやろうとしているのに、計画が狂う。育休を取ったせいで、異動させられたとは証明しにくいが、いやがらせとしか思えない。そういうことをされると、だったら取らない方がマシ、という選択になってしまう。

――『育休世代のジレンマ』では、育休後にマミートラックにはまって仕事のやりがいを失い、会社をやめてしまう女性について書かれていた。資生堂が改革の目的として掲げた、「本人のキャリアアップ」は、女性が働き続けるために必要なこと?

やりがいのない仕事を続けるために、保育園にペイする必要はない、と考えてしまう。時間は短くてもやりがいを見付けられ、どうしても必要なときは時間を延ばせる日もある、というのが理想だ。よく、「バリキャリ」か「ゆるキャリ」か、という議論があるけれど、「バリキャリ」だったら子どものことは犠牲にするのか、というイメージだと、働き続けにくくなる。このプロジェクトは是非やりたい、ということがあれば、交渉して融通を利かせて、働きがいを見つけた方がよい。

ただ、本を出した2014年と比べ、最近では育休後に仕事そのものを辞めてしまう人は減っており、転職に成功している人が多いように感じる。人手不足に加えて、「女性活躍推進法」によって、2016年の4月までに数値目標を掲げなくてはならない企業が女性登用の予備軍を採るため、中途での採用を増やしているからだ。

――働き方改革で、「マミートラック」からの脱出に成功させた資生堂。今後の課題は?

管理職の割合が3割弱と聞き、女性の割合が8割の会社としては、正直少ないと感じた。先ほどの男性の育休取得者が少ないという話とも関連して、まだ独身女性や子どものいない女性への責任の偏りがあるのかも知れない。今回の改革も、「子育て女性には優しい会社」から、「子育て女性も活躍できる会社」への脱皮を目指すということで、均等推進に関してはこれからなのでは。他社は資生堂の成功も失敗も見たうえで、どれだけ自社に合った枠組みを作っていけるかが問われている。

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