成田と羽田をつなぐ「都心直結線」は必要か 国は前向きだが都は消極的、揺れる整備計画
最大の要因は、JR東日本が2014年に羽田アクセス線構想を示したことにある。
JRの羽田アクセス線は、浜松町~東京貨物ターミナル間の貨物線を改良した上で、羽田空港や東海道本線、埼京線、りんかい線との間に新線を敷設するプランで、羽田空港から東京駅まで18分、新宿駅まで23分で結ぶとされている。
総工事費3200億円で、JRと東京都、国で三分の一ずつ負担と想定。開業は2020年代半ば、羽田新駅の利用者は年間2800万人、開業15年程度で投資を回収できると試算している。
東京都は羽田アクセス線を「優先的に建設されるべき路線」と評価した。羽田空港への時間短縮の便益を評価し、特に効果が期待できると判断したからだ。事業主体が明確なこと、都の費用負担が相対的に軽いことも判断材料となったのだろう。
羽田と成田、直結の意義は
この10年で、成田と羽田を取り巻く環境も変わった。
成田の国際線客は2693万人、羽田は1059万人(2014年)、と利用者の差は縮まってきている。とはいえ、成田の利用者が減ったわけではない。国内線や格安航空会社LCCの割合が増え、2015年には総旅客数3733万人と過去最大を記録している。
近年、成田アクセスで注目されているのは格安バスだ。京成高速バスやJRバスなどが東京駅~成田空港間を所要1時間程度(片道900~1000円)で頻発している。JRの「成田エクスプレス」(50分)より割安感はある。逆に鉄道輸送全体のシェアは落ち込んでいる。
成田と羽田を結ぶ需要はどうか。現在、リムジンバスが1日42本、1時間15分で結んでいる。都心直結線だと1時間弱になる。運賃が安ければ、便利になるのかもしれない。
ただ、成田の国内線、羽田の国際線の発着が増加し、それぞれで国際線と国内線を乗り継ぐ機会が増えている。そのような情勢下で、あえて羽田と成田を結ぶ鉄道を敷設する意義はなんなのか。両空港を移動する利用は増えるのか。東京駅の西側の「新東京駅」を拠点とする発想が本当に必要なのか。
京成電鉄が審議会のヒアリングで「確度の高い航空需要予測等が反映された実現性の高い予測を行うべき」と指摘したように、結論ありきで建設を推し進めるのではなく、丁寧な議論が必要だろう。
交通政策審議会の答申がどのように新線整備の優先度を示すのか。新たな整備スキームを示すことができるのか。その発表が待ち遠しい。
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