成田と羽田をつなぐ「都心直結線」は必要か 国は前向きだが都は消極的、揺れる整備計画
東京都は検討委員会を設置して、2003年に八重洲通り南側の再開発と一体整備する案を有力候補として発表する。東京駅前のヤンマービルを巨大なビルに再整備し、その地下に新駅を設けるプランだ(事業費1600億円)。
ただ、これには都も中央区も消極的だった。巨額の税金を投じる動機に乏しいというのが理由で、カーブと停車駅が多くスピードの出ない浅草線での高速化には限度もあった。
その後、国交省と与党自民党は2008年になって、浅草線のバイパス新線として押上~新東京駅~泉岳寺間の建設を主張し始める。これが都心直結線だ。
羽田空港D滑走路が完成し、国際線就航の協議が始まる前に、以前からの約束を形にしたかったのだろう。その後、民主党政権下では凍結されていたが、自民党が政権奪還後の2013年度以降、都心直結線の予算は復活している。
ただ、建設に向けた気運は盛り上がらない。特に、東京都の関心は薄い。
東京五輪開催が決定した2013年9月、猪瀬直樹前都知事は都議会で「2つの空港を結ぶ需要がどれだけあるか、事業採算性や費用対効果も見きわめる必要があります」と答弁している。取材に対しても猪瀬前都知事は「東京から成田まで車なら1時間で行けるし、成田から羽田を電車で結ぶ必然性はない」「通勤電車じゃないんですよ。採算が合うわけない」と消極的な言葉を並べた。
現在の舛添要一都知事も「財政負担もあり、軽々には決められない」と慎重な物言いに終始している。新線建設や既存線改良に巨額の投資が必要なことを懸念しての発言だ。
ついに検討対象から除外
交通政策審議会の鉄道部会は、2014年9月に空港アクセス線に関して関係各社局へヒアリングを実施している。
東京都交通局は、都心直結線開業後の浅草線の本数減を懸念し、信号設備や運行制御装置の投資が必要になると指摘し、都市鉄道等利便増進法のスキームなどの検証、事業採算性の見極めを求めた。
京成電鉄は、事業採算性に関して実現性の高い予測をすべきであり、慎重な見極めが必要だ、と指摘。京浜急行電鉄は積極的に取り組みたいとしつつも、品川駅改良工事との整合性、泉岳寺駅や空港線の線路容量との検討、空港駅の引上線整備などの課題を述べた。
東京都都市整備局は2015年7月に「広域交通ネットワーク計画」を公表する。交通政策審議会からヒアリングを受ける前に、都庁としての考え方を示した。都内で希望のあった西武新宿線の東西線直通構想など37路線の構想を収支採算性や費用便益比など4点で評価付けし、優先順位をつけた。
その結果、「優先的に建設されるべき路線」として、有楽町線豊洲~住吉、JR羽田アクセス線など5路線、続く「検討すべき路線」として新空港線(蒲蒲線)、地下鉄の品川延長構想など14路線を採択した。
その結果、都心直結線は、新線整備の検討対象から外された。
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