【産業天気図・業種別業績予想集計】「会社四季報」2009年3集夏号
『会社四季報』2009年3集・夏号(09年6月15日発売)の最新データを基にした独自集計によれば、今2010年3月期の予想営業利益(金融除く「全産業」ベース)は、前09年3月期比16.6%減益と、前号時点の予想(16.0%減益)から若干悪化した。
リーマン・ショック以降の急速な景気悪化の影響は続いており、今10年3月期も多くの業種で需要減が続く公算だ。一部の業種では、上期にも需要が底を打ち、下期以降徐々に上向いてくると見られているが、数年前のような水準にまで戻るほどの回復力には乏しそう。一方で、企業は人員削減や工場等の拠点集約など、急ピッチでリストラを進めているが、それでも需要減による減収をカバーしきれず、営業利益は低空飛行が続く、というのが今期の典型的なシナリオだ。
ただし、内訳を見ると、前号比で下方修正だらけだった前回に比べて、今回は上方修正業種も少なくない。
今回、今期営業益を前号から上方修正した業種のうち、前号では今期赤字予想だったものが今号で一転黒字化予想となったのは、「非鉄金属」(前号は赤字化→今号は前09年3月期比183.6%増)、「電気機器」(前号は赤字化→今号は同123.5%増)、と「証券業」(前号は連続赤字→今号は黒字化)。また、前号では減益予想だった「ゴム製品」は、一転増益(前号は同79.5%減→今号は同67.9%増)となる見通しだ。
また、減益が続くものの、「金属製品」(前号は同36.2%減→今号は同4.6%減)や「化学」(前号は同76.7%減→今号は19.5%減)は、前号より減益幅が縮小する見通しとなった。
一方、前号から今期営業益予想が後退した業種のうち、「食料品」(前号は同3.4%の増益→今号は同12.2%減)や「建設」(前号は同3.2%増→今号は同5.5%減)などは前号の増益予想から減益予想に転じた。また、「鉄鋼」(前号は同58.5%減→今号は同93.1%減)や「海運業」(前号は同48.7%減→今号は同61.5%減)などは減益幅が拡大する公算だ。
前号同様、今期予想について「赤字化」予想が続くのが「輸送用機器」と「空運業」。「輸送用機器」は、6月初旬についに米国最大手自動車メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)が破たんし、主力の米国市場で消費意欲が一段と冷え込む懸念がくすぶる。一方、「空運業」も、燃料費が一服したとしても、主力の業務渡航(ビジネスクラス)が低調なため、水面下が続くとの見方だ。
全般的には、前号に比べて上方修正業種が増えてきたとはいえ、下方修正業種も残っており、先行きは依然、不透明感が強い状態といえる。多くの企業は今期「下期挽回シナリオ」を想定しているが、今後そのシナリオ通りに進むのかどうかが今後の大きな注目ポイントとなるだろう。