排出権取引は環境問題を解消する決め手になるのか

加速する世界の流れにせかされるように、日本も重い腰を上げた。政府は3月5日、「地球温暖化問題に関する有識者懇談会」の初会合を開催。内閣特別顧問の奥田碩トヨタ自動車相談役が座長となり、排出権取引制度導入への議論を始めた。

これまで排出枠の設定はコスト増につながると反対の姿勢を取ってきた日本経済団体連合会も、御手洗冨士夫会長が、2月25日に「取引が世界のマジョリティであるならそれを積極的に検討していく価値はある」と語り、柔軟な姿勢を見せる。経済産業省での研究会も始まった。閣議決定された金融商品取引法の改正案では、東京証券取引所などが排出権取引を行えるようにした。

排出権取引はもはや一つのビジネスだ。ノルウェーの調査会社ポイントカーボンによれば、07年の温暖化ガス排出権取引総額は前年比8割増の400億ユーロ(約6兆円)。08年は630億ユーロ(約10兆円)へ拡大する。欧米金融機関は早くから排出権取引を手掛け、日本でも丸紅が3月14日、日本企業初の欧州気候取引所での排出権取引を開始した。

削減できた企業は55% 増加した企業は42%

しかし、こうした排出権取引制度は本当に環境問題を解消するのか。

日本貿易振興機構(ジェトロ)は、EUの公表データを基に、EUの排出権取引制度に参加した企業の排出量が05~06年にどう推移したかを調査。9700社のうち06年排出量が05年より減った企業の比率は55%。一方で、増えた企業の比率は42%であった。実験段階のため評価は分かれるが、排出量削減の実現は決して容易ではない。

欧州経営者連盟のフォルカー・フランツ上級顧問は「炭素に価格が付いたことで企業の取り組みが変わった。炭素削減が取締役会の話題となり、投資判断の重要な要素になった」と評価する。しかし、企業が本格的に取り組むためには、20年以降の排出削減目標の明示が不可欠。13年から始まる公開入札方式についても、誰が参加できるのかなど細部をつめることが必要で、課題も多い。

そもそも排出権取引制度が温暖化ガス削減へ効果を上げるには、各企業が取り組むべき排出削減目標が明らかになっていなければならない。そのためには国ごとの削減目標の明確化が求められる。

7月7日、北海道洞爺湖で、主要先進国首脳会議(サミット)が開催される。そこで各国の目標設定ができるのかが最大の注目点だ。議長を務める福田康夫首相は1月のダボス会議で、「主要排出国全員が参加する仕組みづくりや、公平な目標設定に取り組む」と宣言している。その具体的な実現がなければ、排出権取引制度の実効性も低下してしまう。
(週刊東洋経済)

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