日本の電機大手の目前に暗雲が広がっている 

中国のスマホが伸びず円高加速も痛手に

近年、デバイスやICT関連の需要を牽引してきたスマホは、ここにきて成長鈍化の傾向が鮮明となり、その影響がビジネスの現場に波及し出している。

調査会社IHSテクノロジーによると、2016年の世界のスマホの出荷台数は前年比6%増の15億6400万台の見込み。11年は64%だった対前年伸び率は一桁台に下がってきた。世界最大のスマホ市場である中国での16年出荷台数はほぼ横ばいの見通しだ。

スマホ中心にモバイル向けが売上高全体の8割強を占めるジャパンディスプレイ(JDI)<6740.T>では、15年4─12月期まで239億円の黒字だった営業損益が16年1─3月期は19億円の赤字になる見込みだ。

JDIの有賀修二社長は、「中国域内のスマホ動向は、1─3月期は市場全体が相当スローダウンしている。かなり在庫調整が入っている」(8日決算会見)などと述べた。

ソニー<6758.T>は、スマホに搭載されるカメラモジュール事業について、「将来の需要見込みが減少しており、カメラモジュール事業に関する長期性資産の減損につながる可能性がある」(吉田憲一郎副社長、1月29日決算会見)と、注力分野への影響に懸念を示す。

三菱電機<6503.T>も、「6月くらいからスマホ向けのファクトリー・オートメーション設備の受注が大きく落ち込んだ」(松山彰宏常務)と説明。影響はスマホ産業を支える周辺分野に波及している。

円高、影響にはバラつきも

電機大手各社が直近の決算会見を終えた直後、対米ドルの円相場は11日の外為市場で一時110円台を付けるなど急激な円高が進行。ただ、一段の円高が続いた場合でも影響度合いは各社によって異なる。

テレビなどの海外生産が進んだソニーでは対ドルの場合、1円の円高で営業利益で年間70億円のプラス影響がでるという。パナソニックでは対ドル1円の円高で営業利益へのマイナス影響は同9億円。為替に影響を受けにくい体質づくりを進めているという。

カメラや事務機で国内生産回帰の方針をとってきたキヤノン<7751.T>の場合、他の電機大手に比べ円高の影響が大きく、対ドル1円の円高だと営業利益を同46億円を押し下げる。1月27日発表の16年12月期業績見通しで示した為替想定は対ドル120円で、足元(12日午後の東京市場)から8円近い開きがある。

村田製作所<6981.T>は、対ドル1円の円高で営業利益を同35億円押し下げる。スマホの伸び率鈍化の影響については、「高機能化で来年度も10%から20%、(電子部品を)数量的には伸ばせる」(藤田能孝副社長)と強気の同社だが、国内生産比率(約7割)という事業構造ため、円高が一段と進んだ場合、来期以降は近年の好業績に水を差しかねない。

中国経済の減速など足元の環境変化が電機セクターに与える影響は今後、広がるのか。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、「マーケットは大揺れだが、いまはまだ懸念に過ぎない。懸念が実体面を傷つけると困るが、そうなるかどうか見極めている最中だ」と述べた。

ハイテクセクターに詳しい秋野氏は足元の円高について、「一時的な現象だ。ファンダメンタルズとは乖離している。『何とかショック』にならない限り長くは続かないと思う」などと語った。

 

(浜田健太郎 志田義寧 編集:北松克朗)

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