伝統的な左派と右派に分かれた政治体制では、いくら騒々しく反論し合っていても、どちらの側も相手の政治的な正当性を疑問視することは、ほとんどない。司法権の独立や三権分立、言論の自由といった自由主義的な憲法の枠組みのおかげで、たとえば左寄りの政権が右寄りに交代したところで、国自体や政治システムが変わることはないだろう。
しかし、開放か閉鎖かといった二元論の下では、たった1回の選挙が政治システム全体を変えてしまうのだ。かつてはハンガリーが、そして現在はポーランドが、そのような状況を迎えていると思われる。
むろん、旧共産主義国だからというだけではない。不安定な経済情勢や難民の流入、テロリストの脅威など、さまざまなリスクも反リベラル台頭の土壌となっている。表面上では西欧で最も民主主義が発達しているフランスや英国でさえ、極右政党が勢力を伸ばしている。
EUは統合進めて破滅を防げ
そこで、この破滅的な傾向が欧州を飲み込むのを防ぐ方策が問題となってくる。答えは簡単だ。協力と統合である。
そもそも欧州統合を目指すに当たり、第1の目的は大陸を戦争から守ることだった。だが現在、目的は経済のグローバル化から、民主主義政治を守ることに変わっている。
EUがさらに統合を進めれば、現存する危機の解決や、将来の問題への対処、そして自由主義的な規範の強化について、中心的な役割を果たすことができる。仮にポーランドがこの流れに反したら、孤立してしまうとともに、ロシアから痛烈な影響を受けるだろう。
欧州で、リベラルと反リベラルとの間に新たな鉄のカーテンが下りるというのは、気が滅入る光景だ。ポーランドは主要国ではないものの、その経済は大規模かつ健全であるのに加え、ロシアと西欧との間に位置するという戦略的役割もあり、その影響力は小さくはない。
EUとポーランドは現在、互いを試しあっている。そしてEUが勝利した場合においてのみ、ポーランド、そして欧州は勝つことができるのだ。
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