日本の自動車メーカーが新興国戦略を加速 小型車強化や輸出拡大狙う
[東京 9日 ロイター] - インドネシアやタイなどの新興国で日系自動車メーカーの競争が一段と激化しそうだ。トヨタ自動車<7203.T>はダイハツの完全子会社化に踏み切り、小型車戦略を加速する構え。スズキ<7269.T>やホンダ<7267.T>も輸出機能や販売の強化に動き出している。
小型車需要拡大をにらんで日本のベンチャー企業も参入するなど、経済減速が続く新興国市場で、各社のせめぎ合いが熱を帯びている。
スズキ、トヨタの動きに危機感
「大変なことになった。商品戦略、技術戦略、営業力ともにますますふんどしを締めてかからないといかん」――。スズキの長尾正彦常務役員は8日の会見で、トヨタによるダイハツの完全子会社化に危機感をあらわにした。
インドではシェア首位を維持して好調なスズキだが、東南アジアになると話は別だ。2015年4―12月期のインドネシアでの販売は前年同期比22%減の9万2000台。今すぐ回復は望めず、「かなり厳しい状況になっている」(長尾氏)。
昨年には同国で総額約930億円かけて工場を建設したばかりで、小型の多目的車(MPV)「エルティガ」を生産しているが、現地での販売は弱い。工場の稼働率を上げるため、インドネシアからフィリピンやベトナムへ輸出するなどして「てこ入れを始めたところだ」(同)。
ダイハツを完全子会社化するトヨタは、すでにタイ、インドネシアの乗用車シェアでいずれも約4割を占めるトップ。だが、昨年はシェアを落とし、タイで前年比5.4ポイント減の35.6%、インドネシアで同0.6ポイント減の42.2%だった。
トヨタが新興国市場での優位を維持するうえで「まだ存在感を示せていない」(豊田章男社長)小型車での戦略強化は欠かせない。新興国では所得向上に伴い新しいユーザー層が増え、二輪から四輪への乗り換え需要も高まっているが、最初に手にするのが「安くて小さい車」であり、地球環境問題の点からも従来以上に小型車の重要性は増している。
同社はすでにダイハツと共同開発や生産協力を通じて、インドネシアでは両社でシェアの5割以上を握るが、完全子会社化を機に、さらに協力する地域や技術などの領域を広げる。