農業を衰退させる減反政策をやめよ
一方、限界的な零細農家は、現状でもコメ作りから利益を得ることができていないのであり、農地を貸した地代によって、むしろ収入は増えるのである(ただし、コメは買うことになるが)。
ただ減反政策を廃止する際は、価格低下で影響を受ける一定規模以上の農家に対し、所得を十分保障する欧米型の直接支払い(補助金)を交付する必要がある。日本農業復活の原動力となるべき大規模農家は守らなくてはならない。
ところで、なぜ従来、弊害の多い減反政策が続けられてきたのだろうか。
それは第一に、農協という農業コングロマリットの既得権を守るためである。農協は、多くの組合員に農薬、肥料、農業機械などの資材を売り、コメなどの生産物の流通を支配することによって利益を得ている。だが、大規模経営農家は、単独で生産物の流通や資材、資金の調達をする力を持っており、農協離れが顕著だ。零細農家が減ることは、農協にとっては死活問題なのである。
第二は、自民党である。以前より弱体化したとはいえ、自民党にとって農協に組織化された農家は、重要な集票基盤である。あからさまに言えば、自民党には産業としての農業の未来より、農家の戸数を維持することが最大の関心事であり、それには、零細農家が農業に従事し続けることが重要なのだ。
第三は、農水省だ。農家の戸数は農水省にとっても予算獲得におけるパワーの源泉であり、それを維持することは極めて重要だ。
だが、食糧自給率が先進国で最も低くなってしまった現在、農家数の維持ではなく、農業生産をこれ以上減らさないことが緊急の課題だ。それには減反政策をやめ、農業の参入障壁を取り除き、農地の自由な貸借を可能にする制度改革が必要だ。
(福永 宏 =週刊東洋経済)
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