広告の「地産地消」を考える《それゆけ!カナモリさん》

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京都のはんなり広告とは……

 「ますます。つながりますえ。」

京都市バスの車内で、交通広告に目が引き寄せられた。携帯のアンテナを模したKYOTOのデザインがユニークだ。もう一方では、地元のパン屋さんを取り上げて紹介していた。このキャンペーンは現在もポケットティッシュの街頭配布などで、息の長い展開を続けているという。

これが、地場の企業の広告であれば珍しくはないだろう。だが広告主はNTTドコモである。かつて地域会社展開をしていた時代は、各地が競って独自キャラクターによる広告展開を行っていたが、地域会社統合後は広告も全国統一となった。現在は山崎努、成海璃子、堀北真希、松山ケンイチ、堤真一、劇団ひとりといった幅広いスターが活躍するCMを流している。そんな、ゴージャスな展開をする一方で、地域に根ざした展開を行っているとは、何とも意外であった。

「地産地消」とは、「地元で生産されたものを地元で消費する」という意味であり、食料自給率の向上に向けた国の取り組みである。

京都におけるドコモの広告展開を見た時、「広告の地産地消」という言葉が思い浮かんだ。地産地消で重要なことがあると国は指摘している。それは、活動を通じて生産者と消費者を結びつけ、お互いが「顔の見える、話のでできる」関係の中で地域の食料の売買ができ、関連産業も活性化する環境を作ることだという。

ますます。つながりますえ。

売られている携帯電話は全国共通のものだ。しかし、地域ならではの言葉で語りかけ、その地の消費者にRelevant(ぴったり)と思わせる展開をしている。「顔の見える、話のでできる」関係を構築しようとする意図は、ズバリ正解ではないだろうか。

情報爆発と言われる今日、広告も含め、大半の情報が消費者に受け止められずに流れ去っていく。そんな中で、いかに「自分にピッタリ」と思わせるか。「地産地消」は、一つのキーワードになるかもしれない。

 

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年5月29日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。

 

金森 努 青山学院大学経済学部非常勤講師

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かなもり つとむ / Tsutomu Kanamori

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
 

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