原油安が環境政策に与える「負のインパクト」 米国では燃費の悪いトラックやSUVが人気
これまでのところ、世界の2大エネルギー消費国(米国と中国)の決意にブレはない。このため多くの関係者は、今後の見通しを楽観している。市場には混乱があるものの、再生可能エネルギー産業も活況を呈している。
「政策と技術革新主導の低炭素エネルギー普及は、今後も続くだろう」と、コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターのジェイソン・ボードフ所長は語る。また、「化石燃料の需要を減らす代替技術と政策が成果を見せ始めている」と。
オバマ政権の野心的な計画
米エネルギー省は1月末、米国の今年の再生可能エネルギー消費量は、前年比9.5%増となるとの予測を発表。さらにコスト低下と税制上の優遇措置(風力・太陽光発電の新規プロジェクトが対象で昨年12月に米議会が採択)で、長期的な見通しは明るいとした。
同省によると、実用規模の太陽光発電だけでも、2017年までに発電量が45%増える見通しだ。オバマ政権は、2050年までに電力供給の30%以上を風力発電でまかなうという野心的な計画を示している。
世界最大の温室効果ガス排出国である中国では、原油安がどこまで進もうと、中国国内のガソリン価格と軽油価格は1バレル=40ドルの水準を下限とする新規則を施行した。ガソリンと軽油があまりに安くなって、消費者が湯水のように使うようになるのを防ぐためだ。
この新規制では、原油価格が40ドルを割り込んだ場合、精油業界に莫大な利益が生まれることになるが、精油会社はその利益を政府の基金に供出しなければならない。その資金は、省エネや公害対策に利用されることになるという。
だが、世界全体を見回すと、状況はさほどバラ色とはいえない。
原子力発電は、温暖化ガスの排出量が事実上ゼロだが、米国では近年、複数の原発が閉鎖されており、現在、建設中の原発もほとんどない。これは安い天然ガスとの競争が一因といえるだろう。