原油安が環境政策に与える「負のインパクト」 米国では燃費の悪いトラックやSUVが人気
原油安は、運輸や工業における代替燃料(バイオ燃料など)への切り替えも遅らせている。アフリカや東南アジアなどの農村部に発電機を広める努力でも、再生可能エネルギーではなく軽油の魅力が増している。
代替エネルギー産業は、政府の支援が縮小すると立ち行かなくなる危険もはらんでいる。
スペインでは、経済難により2009年に政府の支援が縮小されて以来、再生可能エネルギーの開発が鈍化した。イギリスでも、再生可能エネルギーに対する補助金が減り、大規模なプロジェクトが取りやめになるなど、風力・太陽光発電業界が崩壊する危険がささやかれている。
原油安が与えるプラス・マイナス、両方の影響
米国でも2013年、大掛かりな税制上の優遇策が一時的に失効した結果、ウィンドファーム(風力発電所)の新規建設は前年比92%減と、大幅に減ったことがある。
「政府は、化石燃料が安くなっても、(再生可能エネルギーに対する)適切な補助金を維持する必要がある」と、クリントン政権でホワイトハウス気候変動タスクフォースのメンバーだったポール・ブレッドソーは語る。
原油安は、再生可能エネルギーの導入にプラスとマイナス両方の影響があると、推進派は指摘する。
「諸刃の剣だ」と、カリフォルニア大学デービス校エネルギー&持続可能性研究所のエイミー・マイヤース・ジャフィー所長は言う。原油安(供給過剰)で新規掘削への投資は減るから、掘削によるメタン(強力な温暖化ガスだ)の排出量は減る。しかし石油が安くなったおかげで、「再生可能エネルギーへの切り替えは明らかに鈍化した」。
また、ガソリンが安くなれば、車での移動がより魅力的になると、ジャフィーは指摘する。
「電気自動車には大打撃だろう。消費者が電気自動車に目を向ける大きな理由のひとつは、もう高いガソリン代を払いたくないという思いなのだから」
(執筆:Clifford Krauss記者、Diane Cardwell記者、翻訳:藤原朝子)
© 2016 New York Times News Service
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